【cafe】 umie (香川県・高松市)
真っ白な空間に、切り取られた天井。
そこに描かれる刻々と変化する青空。
本物の空なので、流れる雲が、みるみる表情を変えていく。
人生でただの一度しか出会えないアートだ。
電車や飛行機や船を乗り継がないといけない場所にあるけれど、リュックひとつを背負って何度も見にきてしまう。
James Turrell、1943年アメリカ合衆国ロサンゼルス生まれ。光を作品にしている現代美術家。
彼の作品である『オープン・スカイ』は、国内では二箇所で見ることができる。
- 石川県:21世紀美術館 HP
- 香川県:地中美術館 HP
「ロン・ミュエック展 」が終わらないうちに石川県に、そして夏が終わらないうちに香川県の直島へでかけた。
移動の移動の間の時間つぶしに、ふらふらとさまよっていた時のことだ。
かなり偶然だったが、隠れ家のようなデート向きのカフェ 「umie 」 を発見した。
「北浜アリー」という地区があり、もともとは古い倉庫であったようだ。アリーとは路地裏という意味らしく、その名の通り、ちょっと中心から外れた港のすみっこであった。香川の高松フェリー乗り場の近くで、行き交う船体が見える。
ギシギシと床をきしませながら、店があるらしい二階へ、急な階段を登った。まるで用具置き場か何かの扉が何枚か続き、私は「あけていいのかな・・・」と独り言を繰り返しながら、首と共にドアノブをひねった。
とたん、心地よい音楽が耳に入った。
壁に並ぶたくさんのアートの本。
そして若者たちが、たくさんいた。
サビに覆われたトタンで造られた、四角い建物の中にこんな空間があったなんて、驚きだ。
知らない土地で突然めぐり合ったカフェ。はじめは入店に気後れしたが、そこにあったレトロなソファーは心地よかった。あたたかくてふんわりしたキャラメルチーノのクリームを舐めながら、ふたつの美術館をまわるなかで触れた多くのアートを思い起こした。
ゆるやかな時間が流れてた。
飛行機に乗るのが惜しいくらいだ。