映画『泣き虫しょったんの奇跡』試写会レポ | 燻っています。

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注目の将棋映画『泣き虫しょったんの奇跡』の公開が、9月7日に迫っています。
そんな中、幸運に恵まれて試写会に当選しましたので、フライング鑑賞してまいりました。
平日の夜という日程にもかかわらず、会場には多くの人が集結!
期待値の高さがうかがえますね~。
 
 
『泣き虫しょったんの奇跡』のあらすじに軽く触れますと、これは年齢制限の壁に阻まれて一度は奨励会を退会した男が、就職をしてサラリーマンを経験した後に再度プロ編入試験を通して棋士になる夢へと挑戦した、実際に起きたストーリーです。
少年期、奨励会時代、退会後、そしてプロ編入試験に臨むまでを、シビアに描いています。
原作の瀬川晶司五段は、サラリーマン棋士としても話題になりました。
 
2006年のリクルートのインタビュー記事を見つけたので、ご参考までに。
 
 
 
さて、本題の試写会についてです。
上映の前には、豊田監督と原作の瀬川晶司五段が登壇され、作品にまつわるトークを聴かせてくれました。
その内容の一部をご紹介します。
 
監督が『泣き虫しょったんの奇跡』に出会ったのは、なんと8年前。
もうその当時に映像化をイメージして台本まで書いていたそうですが、関係各所に「将棋は当たらない」と言われてしまったとのこと。
それが昨今の将棋ブームを受けて、満を持しての映画化という運びになりました。
『聖の青春』や『3月のライオン』の名前を出しつつ、「藤井君ありがとう!」と、そこからしばらく藤井君の話題に移っていました。
瀬川さんも藤井君とは対局したことがあり、例の怒涛の連勝スパークの折に「26勝目をプレゼント(豊田監督談)」と。
さらに監督は、瀬川さんは独身なので!どうでしょう!と瀬川晶司五段自身の売り込みまでされていました(笑)。
 
トークは映画の製作方面にも触れ、しかしネタバレにならない程度にということでしたので、キャストの中で将棋の筋がいい人と全然上手くならない人についての暴露トークや、主演の松田龍平氏のこともいろいろとお話ししてくれました。
リアル幼馴染の方と、飲みながら将棋を指していたそうです。呑む将ですね!
役に入り込みすぎて、しばらくは龍平さんから瀬川さんが抜けなかった、なんて話も面白かったです。
映画の本編に関しては、プロ棋士がたくさん出てきます!
原作の瀬川さんも自らご出演されています!(ヒントは……喫茶店のシーン
また、将棋会館を模したセットが現実に忠実で、映画を観た棋士の皆さんでもあれは実際に将棋会館の中で撮影したと思ってしまい、作られたセットだとは気づかなかったそうです。
この映画はすでにいろんなプロ棋士も鑑賞しており、作中の描写にリアリティがあって好評とのこと。
あの羽生さんもご覧になったそうで、作中に出てくる棋士たちは行方八段以外は発見できたようです。さすがですね!
 
そんな羽生さんも面白いと仰った『泣き虫しょったんの奇跡』、将棋をあまり知らない人でも楽しめるように作ったと監督のお話しがありましたので、将棋ファンはもちろんのこと、普段将棋に接していない人も劇場に足を運んでみてほしい作品です。
ただ一人の男の人生を淡々と映しているだけの作品ですが、それが熱いのです。
私は原作を読んでからの鑑賞になりましたが、映像化に際して原作からブラッシュアップされた部分や、逆に原作を掘り下げて泣きのワンシーンに昇華された部分もありますので、原作を未読でも既読でも違った目線で楽しめると思います。
将棋会館の外観や、付近の鳩森八幡神社などもチラチラと出てきますので、聖地巡礼系のファンにも嬉しいポイントではないでしょうか。
 
『泣き虫しょったんの奇跡』を鑑賞してみて、30代40代以降に、より突き刺さる映画ではないかな?と感じました。
ずっとそれ一本に捧げてきたけれど、実らなかった。
それだけしかなかったのに、全力で打ち込んできたとは胸を張って言えなかった。
そんなしこりの残ることに対して、時を経てから再挑戦する。
存在感の大小はあれども、ほとんどの人の中に心当たりが浮かんでくる感情じゃないかな、と思います。
 
この映画を観終わった後は、無性に将棋が指したくなりました。