「レント資本主義」はいかに世界を変えたか?
SNSで「バズル」背景にあるAIロボット(ボット)による大量の自動投稿と「インプ養分」と呼ばれる人間による金目当ての大量投稿が圧倒的多数を占めている世論工作の仕組み(高市人気の秘密)が現存します。世論工作に巨額の資金(宣伝費用)をつぎ込み選挙をゆがめた2026年2月の総選挙における高市圧勝、デマが世論を作った2024年の兵庫県知事選における斎藤の当選を経験した今、「ボット」と「インプ養分」の仕組みを知ることが反撃の根拠地点を作ることになると思います。
GAFAM+Xというデジタルプラットフォームが政治をゆがめ、1%対99%の対立という今の社会の基本構造を見えなくする役割を果たしたことを示しました。もちろん、既存の地上波テレビが兵庫県知事選における斎藤知事当選に果たした役割や、高市当選に果たした役割は決して小さなものではありません。既存メディアも情報の独占によって利得を売る構造は「レント資本主義」と共通しています。その一部をなしているとみなすべきでしょう。しかし、「市民のメディア」の役割も果たしうるGAFAM+Xが極めて反動的なものとして機能した事実を直視しないといけないと思います。
「レント資本主義」とは何か
これらのデジタルプラットフォームは一言で「レント資本主義」呼ばれます。難しい概念なので詳細は省きます。(「レント資本主義」はもう少し広い概念で情報などのデジタル独占による超過利潤を得ている企業総体の資本主義の新たな形態を意味します)。資本主義というものが労働の生み出す剰余価値に依拠して成り立っている社会であることは言うまでもないと思います。労働が「賃労働」という形をとることによってたえず労働者たちは自分自身を支配する力を「物の力」として生み出します。労働者が生産するものは自身によそよそしいばかりでなくて敵対的な物質力を持つ商品や生産手段という形態をとり、労働者が生産しているのに逆に自分自身を支配する力をたえず強化し続けるものとなっているということです。これらの物の力は生産現場から切り離されてそのものと力をふるうようになります。流通過程から生じる「商業利潤」、資本所有に基づく「利子」、土地所有に基づく「地代」が自立化します。これらは労働の生み出す剰余価値を富みの源泉としていますが、それらの内部には剰余価値を生み出す構造を持っていません。産業資本から剰余価値を収奪しているのです。自らが価値を生み出さず、外から剰余価値を収奪するわけです。
「コモン」の資本による支配
この「地代」概念を拡張して「コモン」と呼ばれる社会的共有材の場の資本主義的独占を通じて生じる超過利潤のことを「レント」と呼びます。「コモン」というそれ自体は民衆のものであるべき領域が、資本家によって独占されている状態です。自然の滝の落ちる土地に置かれた水車に例えられることもあります。落ちてくる滝の水が情報であり水車がデジタル技術(アルゴリズム)であり土地がデジタルプラットフォームであるという訳です。土地の持ち主はただで情報を入手して利潤を獲得します。ただ単に土地を持っているというだけで利潤を得られるのです。もちろんデジタル技術を革新するための投資はしていますが。
この「レント資本主義」は生産現場だけではなくて生活次元にまで資本の支配力が及ぶ点で、資本の力が生活領域全般を実質的包摂する現象だということができます。無自覚の行為である個人の情報発信や個人情報である医療情報や何を買ったかなどの情報そのものがデジタルへと変換される過程で、アルゴリズムの操作によって無自覚の内に欲望や意志を変容させられるということによって、資本の支配の新たなる支柱となっているのです。労働することによって物の力(資本)に縛り付けられている上に、生活することによっても物の力に縛り付けられている状態が「レント資本主義」の実質的包摂の社会化だということです。
資本主義の危機と「レント資本主義」が作り出す危機
基底には「低成長」という資本主義の危機があります。社会に物が飽和状態になっている中で、生産の拡大ができない状態が現代の「低成長」社会です。そのなかでデジタルプラットフォームやデジタル巨大企業が肥大化して資本主義的生産様式が本来民衆の物である「コモン」を破壊して危機を常態化しながらも、生産過程のみならず、人々の生活過程全体を包摂することによって、その支配をますます強力にしている、危機と包摂が同時に深化するという状況が目の前で進んでいます。危機というのは「コモン」という共有材の場をたえず侵食しているからです。AIボットが犯罪を生み出したり、デマゴギー政治の媒介力となって社会総体を破壊し続けたりしているのがデジタル巨大企業の実態です。SNSや既存メディアが巨額の宣伝費用を背景にして生み出した高市政権が、イラン戦争に加担することでホルムズ海峡を通した石油輸入が停止したり、中国敵視発言をすることで中国からの輸入がストップしたりという社会的な危機を生み出しながら、AIボットや「インプ養分」や既存メディアが作り出す世論操作によって維持されているという異常な現象をわれわれは目の前にしているのです。
今は資本主義が危機であり、新自由主義政策も破綻し新たな経済機軸も見つからないというどん詰まりの危機であるからこそ、資本家たちとその手代である高市・自民党はGAFAM+Xと既存メディアに巨額の広告費をつぎ込んで民衆を欺く必要があった、ということなのです。一見「積極財政風」のスローガンで軍拡と一般財政における緊縮財政政策を塗り隠すというやり口がそれでした。
われわれの対抗策
では、対抗策は何か。われわれは、GAFAM+Xなどのデジタル巨大企業から「コモン」という本来は民衆の物である領域を取り戻し、資本家の支配と対抗する必要があるということだと思います。その努力は一方ではデジタル巨大企業への情報開示訴訟や、情報削除訴訟として闘われています。それだけではなくて多くの人たちが資本の独占的支配と対抗する言論をGAFAM+X上で展開しています。
AIボット技術をも使ったネトウヨの跋扈、巨額の宣伝費を使った地上波テレビやSNSの支配というものはこのように「レント資本主義」として解剖することができます。市民の場としての「コモン」を確立し資本の支配から奪い返す過程が、市民の場としての「街頭デモンストレーション」の拡張と合わせて、市民自治に基づく新たなSNS空間やデジタル自治空間の場を拡張するものとして、資本主義=資本の支配の転覆として展開されうるのではないでしょうか。それが現存のデジタル技術に立脚した新たな計画経済を伴った社会主義像として展望されうる未来社会なのではないかと思います。