【河合隼雄著「ユング心理学入門」岩波現代文庫276頁以下】

 自己実現における重要な時期において、われわれはしばしば、不思議な現象に出会うことがある。それは偶然にしては、あまりにも意味の深い偶然と考えられる現象が起こるのである。たとえば、今まで絵には全然関心のなかったひとが、友人と絵の展覧会に行く夢を見る。そして、分析家の所で、自分の劣等機能としての感覚機能の発展という点から、絵を見にゆくのも意味があるだろうと話し合う。帰宅すると、夢にみた友人から電話があって、絵の展覧会にゆこうと誘われるといったような現象である。これは、いわゆる夢のお告げといわれるもので、予知夢のことについて述べたときに、例も示しておいた(同書168頁参照)。このような、「意味のある偶然の一致」を、ユングは重要視して、これを因果律によらぬ一種の規律と考え、非因果的な原則として、同時性(synchronicity)の原理なるものを考えた。つまり、自然現象には因果律によって把握できるものと、因果律によっては解明できないが、意味のある現象が同時に生じるような場合とがあり、後者を把握するものとして、同時性(シンクロニシティ)ということを考えたのである。

 注意しなければならないのは、先の予知夢の例を述べたところの後に、次のような記述があることである(同書169頁以下参照)。

 予知夢はまことに不思議な現象であり、われわれ夢分析を行うものは、ときにそれに出会って驚かされるが、予知夢のように見えて、実は正確にはそうでない場合があることに注意しなければならない。(中略)身体的な異常があるのに本人が気づかないでいるが、睡眠時には、その身体の異常が感じられて夢を見るようなときは、夢に見た病気にしばらくたってからかかるように思われるので、この場合も、夢によって病気が予知されたように思われる。実際問題としては、この場合確かに病気が予知されたわけであるが、ここに予知夢としてあげているのは、このような合理的な説明のつかないものをさしているのである。

 

(乃木坂46のシンクロニシティ歌詞)

>だから 一人では一人では負けそうな
突然やって来る悲しみさえ
一緒に泣く誰かがいて
乗り越えられるんだ

 

ずっと お互いにお互いに思いやれば
いつしか心は一つになる…

 

 シンクロニシティは合理的な説明のつかないものであり、因果律によっては解明できないが、意味のある現象が同時に生じるものである。

 

 この観点からは、「今、彼女が辛く、苦しんでいる。それが、神の目からすれば、罪によるものであり、その罪を贖わなければならないものだ」としたら、私も、その苦しみを共に感じ、もし地獄に行くべきならば共に行こう、とするのは、シンクロニシティではなく、共感ないし共鳴であろう。どれほど強く、直接的な感覚であっても、彼女にとっては慰めにもならぬ、単なるセンチメンタリズムにすぎないであろう。