18年ほど前、カオサンロードの裏路地みたいなところにある安宿にいた。
一泊が50バーツぐらいの日本人宿としても最下層なドミトリーだった。
その宿の“住人”たちは、だいたい3~6カ月滞在な感じ。
濃い目のキャラが多かったのだが、なかには宿を出てアパート暮らしを始めるような奴もいた。
そんな元住人が訪ねてくることがあった。
通称「ハカセ」
メガネかけた小柄のツーブロック。
三発ぐらい殴ったら死にそうなぐらい弱々しく
虚弱体質の見本のような男が宿では尊敬されていた。
その理由というのが、
外でアパートを借りていること。
娼婦の彼女がいること。
タイ語の学校に通っていることだった。
どうでもいいステイタスだが、当時は俺にとっても眩しかった。
海外慣れというのではなく、日本を捨てている感がたまらなくかっこよく見えたのだ。
(誰にもそういう時期はあるものです)
そんなハカセが宿に来ると必ずやらされていた芸がある(天性のいじられキャラだったので)。
それが……
スーアイ
変顔しながら体をくねらせて言うのだ。
とにかくキモかった。
ハカセのキモさに反して、「美しい・綺麗」の意味を持つタイ語である。
色街では良く使われていたように思う。
ときどき、ナーラック(かわいい)も言ってくれるが、こっちはあまりうけていなかった。
さて、ハカセはいまどこでなにをしているんだろう。
そんな日本人宿での思い出でした。
※その数年後にも旅をしていたときの俺