ゆうれい貸家には想い出がある。

俳優祭の時に私は三津五郎さんに話しかけた。「泥棒と殿様、凄くよかったです。泣いちゃいました！」って。三津五郎さんは「まだ内緒だけどね、今度の納涼歌舞伎でまた山本周五郎の《ゆうれい貸家》って言うのをやるよ」と白い歯を見せて爽やかな笑顔を見せてくれた。

私は慌てて文庫本を買って読んだ。

今回は巳之助、児太郎、勘九郎での再演。納涼歌舞伎も子供へ世代交代だ。

「ゆうれい貸家」は懐かしみながら観た。巳之助は三津五郎よりダメ度が強めな弥六。児太郎はゆうれいにしてはガタイが良過ぎだけどコミカルな動きで面白い。

で、勘九郎が出て来たらもう勘三郎の幽霊か？って位に似ていて笑う。

下町の世話物の夏から冬への風情が有って潮の香りがした。

私が子供の頃はまだ長屋も有ったし柳の木も有って、夏は長屋で肝試しをしていた。

そういう環境にあったせいか、世話物は大好き。

鵜の殿様

山川静夫原案の松羽目物の舞踊。

幸四郎親子。染五郎が若殿風情が出ていて良かった。長袴、扇子の扱いも自然で美しい。

激しい動きが有るから演者は汗びっしょり。

ストーリーも分かり易く楽しい一幕。

これは幕見に行こう！

しかし、染五郎は役になりきれるね。

若い頃の亀治郎を思い出す。自分が消えて役で全く変わるの。

踊りも達者になったし、

染五郎は良い役者になる。

今日はかぶり付き。隣に若い女の子が1人で来ていた。幕間に少しだけお話しした。鶴松、幸四郎ファンとの事。

今日は休みを取って来たから1部から3部まで通して観るらしい！若いから大丈夫。

「鵜の殿様」もとても楽しそうに観ていた。

若いファンが私は嬉しくて帰り際に筋書きを渡した。「お勉強して、歌舞伎をずっと好きでいてね」と伝えた。彼女は立ち上がってお礼を言ってくれた。

歌舞伎はこうやって続いて行くのだろう。

また会えると良いな。

役者が若くなったから、客席も若くて私は高齢者グループ。

筋書きの表紙がいつも楽しみ。

涼しげで良いね。

納涼歌舞伎1部(ゆうれい貸家、鵜の殿様)