はじめに
こんにちは、まるこです
5.29日、角川書店・朝日新聞社による合同企画スペシャル講演会「An evening with Dan Brown ダン・ブラウン AIと人類の未来」に行ってきました
場所は時事通信ホール、ゲストは池上彰さんです
300名限定のイベントだったため、行けなかったたくさんいらしたと思います。そんな多くのファンの方のために、講演会で垣間見えたブラウンさんの知られざる魅力や作品の魅力について仕入れた情報をたくさん放出していきたいと思います
録音・録画は禁止されていましたので、同時通訳を聞きながらメモしてきたノートと記憶を頼りに書いています。全てを拾えているわけではありません…ので、急に話が飛ぶこともあります。また、勝手に行間を読み間違えて勘違いしている部分もあるかもしれません。
ご了承ください。
ダン・ブラウンさんとは?
このページを読んでくださっている方に説明は必要ないと思いますが…
ロバート・ラングドン教授シリーズ『ダヴィンチ・コード』の著者です。
ラングドンシリーズはトム・ハンクス主演で映画になっています。
(「ダヴィンチ・コード」「天使と悪魔」「ロスト・シンボル」「インフェルノ」)
有名絵画や芸術作品、建築装飾などの魅力や謎を作品中に織り交ぜながら、”科学と宗教の対立”などセンシティブな問題にも切り込み、出会った頭脳明晰美人と協力したり逃げたりしながら事件を解決していくスタイルの小説です(説明雑)
彼の小説は緻密な下調べの上に成り立っていて、実在する絵画や建築についての小ネタや蘊蓄がとーーーーってもまるこを惹きつけるのです
そして今年2月末、満を持して最新作の翻訳版『オリジン』が日本でも出版されました
新作『オリジン』について
あらすじ
ラングドンは元教え子のカーシュ(コンピューター科学者・天才未来学者)が、人類最大の謎、”われわれはどこから来たのか、われわれはどこへ行くのか”を解き明かす衝撃的な映像を発表するというので、招待されたスペインのグッゲンハイム美術館を訪れた。
しかし、発表の直前、カーシュは銃撃され殺害される。
カーシュ暗殺は宗教界によるものか?またはスペイン王宮の差し金か?
誰も信用できない中、ラングドンと美人美術館館長アンブラは逃亡しながら、カーシュの遺した人工知能ウィンストンの助けを借りて謎に迫る!(『オリジン上』帯より)
まるこの軽い感想(ネタバレなし)
私が美術好きの観点から興味を持ったのは…サグラダ・ファミリアやカサ・ミラなどのガウディ建築が魅力的に語られ、ガウディの創作の源について語られていた部分と、ウィリアム・ブレイクの絵画と思想が語られていた部分、そしてグッゲンハイム美術館でラングドン教授が現代美術と”対峙(?)”する部分です。
また、都市伝説好きという観点からぞくぞくしたのは…カーシュの衝撃発表のVTRの中で語られていたこと全てです。特に、”生命は無秩序の必然的な産物”ということを説明する部分がとても興味深かったです。
この部分は映像化をすごく意識して書かれていたなと感じました。読みながら私もVTRを一緒に見ているような感覚になりました。早く映画で確認したいと思う箇所ですね
今回も”宗教と科学の対立”を一つの軸として展開されましたが…その面白さも魅力です
そして、本の中にいろいろな人の印象的な言葉が散りばめられているのも好きなポイントです
特に今回「おおっ」ってなったのは、「オリジナリティ(独創性・創造性)はオリジン(起源)への回帰によって成り立つ」というガウディの言葉です。
…日本語からはそういう発想にはならないので、まあ言葉遊びではありますが、目から鱗というか、”起源あっての独創性”なのかと妙に納得させられました。
あと、今回の重要人物(人物?)人工知能ウィンストンの言動も面白かったです。
とにかく仕事が早くて、調べて欲しいことややってほしいことを頼むと、場合によっては人よりも早く正確に何人分もの仕事をやってのける優秀な相棒でした。心を持っているように感じるけど…どうなのでしょうか?人工知能についても興味をそそられました
ダン・ブラウンさんの記念講演会
それでは、前置きが長くなりましたが、いよいよ講演会の内容に入っていきたいと思います。
概要
ダン・ブラウンさんが作家デビュー後初めて来日、最新作『オリジン』刊行記念・プロモーションとして5月29日夜に開催された講演会です。
講演会タイトル「AIと人類の未来」
ゲスト:池上彰さん
企画:角川書店・朝日新聞社
記念講演会の内容
①ダン・ブラウンさんが用意された4分間のVTR視聴
②ダン・ブラウンさんの講演
③写真撮影タイム
④池上彰さんとの対談
⑤お客さんからの質問コーナー
です。
①VTR視聴
まず最初に、ダン・ブラウンさんがご用意されたVTR「『オリジン』完成に寄せて」が流されました。
今回の舞台となったグッゲンハイム美術館やサグラダ・ファミリアなどと共に、ダン・ブラウンさんが「なぜ今回の舞台にスペインを選んだか」や「今回の見どころ」などを語っていました。
彼が語っていた話の日本語訳全文を手元に持っているのですが、そのまま載せてしまうのはちょっとあれなので、かいつまんでご紹介しますね
―――――『オリジン』完成に寄せて:VTR――――――
(※ここで言う「私」はダン・ブラウンさんを指します。)
私は、古代と現代を同時に扱う物語を書きたいと思った時、スペイン以外ないと思いました。
スペインは豊かな伝統と宗教を持ちながら、革新と科学技術への挑戦を恐れない、未来への展望を持った国だと考えているからです。
物語の冒頭で、ラングドン教授はグッゲンハイム美術館を訪れます。現代芸術を前にして彼は戸惑いますが、私自身は”観る者としての意識を根本から覆してくれるような作品があるから”現代芸術に心惹かれます。現代アートは作品に「参加」するよう誘い、観るものを作品の一部とすることでさまざまな解釈を提示します。
『オリジン』はラングドンシリーズらしく、秘密・象徴・暗号がたくさん登場しますが、これまでの教授の専門分野・得意分野には留まりません。
私は、物語にすべき大きな問いやテーマを見つけると、まず舞台をどこにするか考えます。
選択基準は”ドラマティックな場所”か”個人的に興味を惹かれる場所”。
そして舞台の雰囲気をつかむためにその場所を訪れます。執筆する上で異国を旅すると、信じられないようなすばらしい場所へ行けることがとても好きなのです。(高所恐怖症なので、時々苦手な場所もありますが…)
私がスペインで最も魅了された場所の一つはモンセラット修道院です。
山頂の荘厳な修道院で、修道士たちは孤独に生き、「究極の問い」への答えを求め思索を重ねます。
私にとってもスペインへの旅は「究極の問い」の答えを探す旅となり、私なりの答えを見つけ『オリジン』が完成しました。
――――VTR終わり―――――
②講演
続いてダン・ブラウンさんの講演で何をお話しされたのかご紹介します
注
*同時通訳を頼りにメモしたことをお話の順番に書いていきます。
全てを拾えているわけではないので、急に話が飛んだり何言ってるか分からない部分があると思いますが…我慢してちょんまげ自分でも理解できてない部分があるので
*ここでの「私」はダン・ブラウンさんを指します。
*まるこの個人的な補足やちょっとした感想は文字の色と大きさを変えて書いていきます。
――ダン・ブラウンさん講演―――
未公開処女作「キリン、ブタ、火のついたお尻」
私が初めてお話を書いたのは5歳のときで、私の口述を母が筆記しました。
題名は「キリン、ブタ、火のついたお尻」(←ここ、爆笑ポイントです)
段ボールで母が表紙を作ってくれ、リボンを通して本にしてくれました。
それを今日は皆さんに見せるために持ってきました。
(と、B4サイズくらいかな?と思われる絵本を見せてくれました。表紙は字と絵が描かれ、50年近く前のものにしては保存状態がとても良かったように見えました。)
今思えばなぜこのタイトルなのかは謎ですが、当時の私にとってはとっても面白く最高な傑作でした(笑)
家族について
母は宗教音楽家(聖歌隊を率いるような人)で、敬虔なクリスチャンでした。
母の車のナンバーは「KYRIE(キリエ)」でした。キリエとはギリシャ語で「神」を意味します。
今日は皆さんに見せるために実物を持ってきました。
(と、「KYRIE」が刻まれた実物のナンバープレートを持参して見せてくれました。)
父は数学者で、父が書いた本(教科書?)は世界中に翻訳されてるので知っている人は知っているでしょう。
父の車のナンバーは「METRIC(メトリック:メーター法)」でした。
(と、こちらも本物の「METRIC」ナンバープレートを見せてくれました。手作り絵本やナンバープレート2枚を皆に見せるために(?)わざわざ日本まで持ってきてくれたのかと思うとおちゃめで可愛らしいですよね)
少年野球をしていた時は、どちらが迎えに来るか―神か数学か―によって私がヒーローになれるかが決まりました(笑)
父はいつも計算機を持ち歩いて、ピザ屋さんに行くときなんて、”Lサイズ1枚買うのがいいのか、Sサイズ2枚にするのがいいのか”きっちり計算して決断していました。
そんな父からは科学的な影響を受けました。
父と母は互いに信念を巡ってけんかをすることはありませんでした。
少年時代の疑問
私は成長すると、2つ(宗教と科学)は矛盾するように感じました。
教会では「人や世界は神が創った」と教えられますが、学校では「進化論:人は猿から進化した」を学びました。
ある日、神父に「どちらのストーリーが正しいのか?」と尋ねました。
すると、「良い子はそんな質問をしてはいけないよ」と言われてしまいました。
それから私はあまのじゃくな男の子ということもあるので、なるべく大きな声でそのような疑問を問うようになりました。
こうした経験が今の著作のテーマにもつながっているのです。
すきまの神:神は科学のもとで生き残れるか
古代の人々は「神」という存在を作ることで、説明できない現象(自然現象・疫病など)を説明出来るようにしてきました。
そうした人々の暮らしの隙間を埋めてくれる神々を「すきまの神」と呼んでいますが、今や科学の進歩によってその隙間がなくなってきました。
しかし、一掴みの問題がまだ残っています。
「私たちはどこから来たのか、そしてどこへ行くのか。」
この問題は、今でも宗教と神が隙間を埋めています。
人は死んだらどうなるか
人は死んだらどうなるか。
この問題に科学は「全て分解される。ただそれだけ。」と答えるでしょう。
しかし宗教は”何か別のものがある”と考えます。そして私たちは、愛する人がいたら(人を愛するほどに)その別のものを信じたいと思うのです。
もし、来世があるなら…全ての宗教が同じ経験をするでしょうか?
…
AI(人工知能)を作り、AIをデジタル空間に彷徨わせたらどうなるでしょう?
AI自身が「自分はどうやって作られたのか」「父は誰なのか」「なぜ作られたのか」などと知りたがるでしょうか?
AIが創造性を持つことがあるでしょうか?
なぜ宗教に違いがあるか?
なぜ宗教に違いがあるのでしょうか?
いや、実はそれほど違いはないのです。
真理を説明しようとしたとき…(ちょっとメモ出来なくて続き書けない。すみません。「真理を説明しようとしたとき、違う言語を使っているだけ」、みたいなことだったかな?)
…
思いやりは冷酷より良いのです。
つくることは壊すことより良いのです。
愛することは憎むことより良いのです。
『ダヴィンチ・コード』の影響
ダヴィンチ・コードが売れた後で、街を歩いていたら、突然すれ違いざま牧師から文句を言われました。
牧師「あなたの小説には(イエスは神ではなくただの人間という部分など)気に入らない部分がたくさんある。まったく認めていないよ。…でも、君にはお礼も言わなければいけないな。毎月主宰する勉強会にいつもは決まった8人が来るだけなんだけど、”次回はダヴィンチ・コードについて話します”と予告したらその時は400人も集まったよ。おかげで大きな教会のホールを借りることになった。」
と言われました(笑)
映画『ダヴィンチ・コード』裏話
ダヴィンチ・コードの撮影は(映画の撮影では)とても面白いことや不思議に思うことがたくさんありました。
・撮影用に”小さなルーヴル”のセットを作ったんだけど、真夜中に私が絵の前に立ち眺めていると、その横をアルビノ(メラニンが作れない病気で肌の色が真っ白な人)の修道僧が走っていきました(笑)
(このエピソードには何の脈絡もないのですが、その情景を思い浮かべたらなんだかとってもシュールで、アルビノの修道僧は映画の中では「冷酷な狂信者で事件の実行犯」なのでギャップが可笑しいなとまるこ的にツボりました。)
・マグダラのマリアがダイエット効果を気にしているなんて知りませんでした(笑)(←これは単なる冗談ですね)
・スコットランドでのあるパーティーで(映画のプレミア?)、監督とトム・ハンクスと私に用意されていた衣装がキルトという男性用スカートだったのです。初めは履き方が分からなくて、トムが教えてくれたのですが、まさか彼にスカートの履き方を教えてもらう日が来るなんてまったく人生何があるか分からないものです(笑)
科学と宗教
8世紀ころ、バグダッドはあらゆるものに門戸を開いていました。
科学は当時の世界の先端をいき、科学や数学の専門用語でアラビア語由来のものも少なくありません。
しかし、イスラム世界によって数学はあくまで哲学であるとされ、科学が宗教的なものに限定されると、科学が宗教によって制限されるようになりました。
これはキリスト教も同じです。(コペルニクス、ガリレオの地動説が宗教によって否定されていたことなどについて言及していました。)
2017年、ある政治家がこんなことを言いました。
「地球が出来たのは6000年前であり、(聖書(創世記)を文字通り鵜呑みにし、計算するとそうなるようです。)化石は神が私たちの信仰を試すために作られたものだ。」と。
科学が進歩する世界で、宗教はどう振舞ったらよいのでしょう。
科学は日進月歩です。
宗教は何世紀も変わらないことがあります。
科学の進歩において真に問うべき問題は、倫理観を技術と共に進歩させていけるかどうかです。
未来について考える時、今の神がどんな役割を担うでしょうか?
人が”先天的に・生まれつき”信仰する宗教など存在しないのです。
(人は基本的には)親が崇める神を信仰するのです。
終わりに
今まで以上に絶対的な真実は、”開かれた心を持つことが大切だ”ということです。
意見の違う人たちとの対話が大切です。
人種や言葉、世代、時には時空を超えてアイディアの共有を許してくれるのが本なのです。
――――――――――――
③ちょっと休憩:フォトセッション
講演が終わると池上さんも登場し、一般の方も写真撮っていいよ~っていうフォトセッションの時間が設けられました
皆さんが撮りやすいようにと、二人で一緒に右向いて、真ん中向いて、左向いて…ってしてくれたのですが、その流れで最後にダン・ブラウンさんが「I'll wanna looking back…」って言いながら後ろ向いたりして会場の笑いを誘っていました
めっちゃおちゃめ可愛い
(その様子はまるこのインスタで動画見られます。覗いてみてね。)
④池上さんとの対談
続いて、池上さんの質問にダン・ブラウンさんが答えるという形での対談がなされました。
お馴染みの”池上節”炸裂でとっても面白かったです。
*対談内容はダン・ブラウンさんの言葉はこのまま黒字で、池上さんの言葉は青字で、私まるこの補足や感想・つっこみはオレンジ色・小文字で書いていきます。
*全てを拾えているわけではありませんので話は飛び飛びになります。ご了承ください。
――対談―――
池「先日、ケンタッキー州にあるクリエイティブミュージアムへ行ってきました。そこの学芸員さんに-学芸員さんと言っていいのか分かりませんが…-「世界が出来て6000年、化石というのはノアの箱舟に乗れなかった生き物たちです。」と説明されました。そこで「海の生物はどうなっているのですか」と尋ねると「魚は頑張って生き延びたんですよ。」と答えられました(笑)」
D「”ミュージアム-博物館-”と名乗っているのは良くないですよね(苦笑)」
今でも聖書が100%正しいとして世間に声高に喧伝している人たちがいることに対して、日本人の前でこんな話をすればみんな笑うけど、世界を見渡した時、その反応が全てではないようです。ダン・ブラウンさんは「科学と宗教」をテーマに話をするとき、日本人はアメリカ人とは違う反応をするとおっしゃっていました。
池「お母様は敬虔なクリスチャンですが、あなたの著書をお読みになっているのですか?どんな反応をされていますか?」
D「母は読みました。通っている教会からは「あなたは子育て間違ったんじゃないか?」と言われたそうです(笑)」
池「なぜ今回の舞台はスペインだったのでしょう?」
D「古いものと新しいものが混在しています。キリスト教が根強く残っていながら科学も進んでいます。また、数年間スペインには住んでいたこともあったし、大学にも通っていました。」
(今回書きたいテーマに合っているからと、一時期住んでいたこともあり個人的に好きだし、再び訪れたいという気持ちがあったようです。)
D「日本を舞台に書くという構想がないわけではないですが…(特に今回のテーマと照らしたときに)日本の哲学と宗教は科学と衝突しないから、このテーマでは日本を舞台に書けないのです。仏教や神道は科学と同居しているのです。…日本人と話をすると、”どちらが良い・悪い”という判断ではなく、とても建設的な話合いが出来ます。」
池「おや、アメリカ人は建設的ではない?」
D「…いやいや、(会場を見て)新聞社さんたち、今のは違うよ。記事にしないでね。フェイクニュースだフェイクニュース(笑)」(←会場爆笑ポイント)
池「仏教は科学と同居することをよくご存じですね。日本について、仏教についてよく勉強していらっしゃるようです。」
D「勉強しました。宇宙、科学(化学かな?)、物理…。それらの奥深くに入り込むほどに物理と仏教はからまり、意見が一致してくるのです。」
池「確かに、ダライ・ラマは宇宙物理学者との対話を楽しんでいますね。」
D「ヴァチカンも勉強しています。宇宙を観測したり、進化論について勉強もしています。宗教として進化しようとしているのです。」
…
D「今や、科学技術は子供たちに宗教の影響を少なくしています。スマーフォンを使えば簡単に世界と結びつくことが出来、知りたいことはネットで調べることが出来る時代です。科学技術を使って互いに結び合う世の中は、宗教が目指しているところですが、それは技術が可能にしているのです。」
池「AIについての質問です。シンギュラリティは起こると思いますか?」
(※シンギュラリティとは:人工知能が自分の能力を超える人工知能を自ら生み出せるようになる時点。…AI自身が自分の能力を少しでも上回るAIを生み出せるようになった時、それを繰り返すことで圧倒的な知能がいきなり誕生するというストーリー。つまり、「AIが人間を超えることはあると思うか?」という質問です。)
D「幾何級数的な進化が突然起こるかもしれません。人の頭脳を超えることもあるでしょう。
このことについてバルセロナでAIの科学者と話をしました。
プログラムは基本的には”人にとってよいもの”を作ります。もちろん倫理的なジレンマもありますし、楽観論と悲観論が両方存在します。
人類は過去にも核兵器や原子力など非常に危険なものも創り出してきました。しかし、私たちはそれによって滅びることなく今も生きています。人の”存続したい”という欲求が勝つのです。私たちは建設的です。危険なものを創り出したとしても、善のことに使うでしょう。
テロなどにも使われるのではないかという懸念もありますが、技術を使って世界中に豊かさを実現できるならば、テロも減るでしょう。」
池「創作についての質問です。ローマ教皇やルーヴル美術館館長、スペイン王室など小説のモデルから抗議は来ないのでしょうか?」
D「ありますよ(笑)しかし、こんな言葉があります。”筆は刀より勝る”」
池「日本にも同じような言葉はあります。」
D「まあ、フィクションで書いていますから。イタズラみたいなものです。好きな先生は生かして活躍させたりして、嫌いな人は殺しましたよ(笑)」
(この辺り、どこまでが冗談なのかもはや分かりません(笑))
池「書くときに事前報告はするのですか?」
D「その人によりますね。
今まで一人だけ自分の描写に文句を言ってきた人がいますけど、一人だけです(笑)みんな楽しんで満足してくれています。」
池「次は誰を殺しますか?」
D「もっと難しい質問をしたら池上さん、あなたを殺すかもしれませんよ(笑)」
池「ラングドン教授は今後日本に来ることはありそうですか?」
D「日本を舞台に小説を書くには私自身が日本について(日本の哲学・思想・仏教や神道についてなど)もっと学ぶ必要があると考えています。知識が全く足りていませんから。」
(日本を舞台にという構想がないわけではなさそうですが、実現されるのはまだまだ先になりそうな雰囲気ですね)
池「最後に、小説の中で私はこの「未来への祈り」の部分に大変感銘を受けました。
「願わくは、われらの思想がテクノロジーに後れをとらぬことを。
願わくは、われらの情熱が支配力に後れをとらぬことを。
願わくは、恐怖ではなく愛が変化の力の源たらんことを。」
(『オリジン 下』p254)
ありがとうございました。」
⑤質問コーナー
続きまして、会場のお客さんからの質疑応答コーナーがありました。
全ては書き出せないので書ける部分だけ書いてます。ご了承ください。
(ある質問に答える中で、現代アートについて言及されました。その部分が印象的だったので書き出します。)
D「今回、ラングドン教授を”モダンアート”に入り込ませたかったのです。アートとは何か理解しにくいですね。グッゲンハイム美術館で聞いた話によると、現代アートの定義というのは”(作った人が作ったものを)アートと意図していたらそれはアート”なのだそうです。
古典アートは「アーティストの力」が問われていた世界でしたが、現代アートというのは「コンセプト」や「アイディア」が評価されるのです。」
質問者「ご兄弟はいますか?」
D「10歳下に弟がいます。彼は音楽家をしています。それから2歳下に妹がいます。彼女は画家です。
実家は本当に田舎で何もなくて、家には親の教育方針によってテレビがありませんでした。
何もないところでテレビを取り上げられたら…子どもが出来る遊びは限られます。本を読むか、音楽を聴くか、絵を描くか…それくらいしかないのです。犬を散歩させるときなどは森に出かけましたが、そこには想像上の友達がたくさんいました。そんな遊びしか出来ないんです(笑)
その結果、私たち兄弟は小説家、音楽家、画家になったのですね。」
(今回弟さんの曲が小説の中に登場していました。
《ミサ曲 チャールズ・ダーウィン》 グレゴリー・ブラウン(2013発表))
『オリジン 下』p169~174
質問者「おススメの本を教えてください。」
D「『Wrinkle in time(リンクルインタイム)』はおススメです。
児童書ですが、物理の応用などの要素もあり、またいろいろな要素が入っていてとても面白いです。
それから『the Bible 聖書』ですね。
12歳頃、聖書を読んでいて混乱することもありました。
しかし、”別の観点からものを見ることが出来るようになった”と思います。というのは、”本に書かれたものが全て正しいものではない”ということを理解したのです。
それからシェイクスピア作品は”言葉遊び”が面白いですね。
あと、AI関連の本だと『ライフ3.0』はおススメです。
あとは『インライトメント ナウ』がおススメです。」
(スペルが分からないのと、いろいろと検索してみたのですがAmazonで見つけられませんでした。何の本か分かりません。作者はスティーブンなんとかさんです。)
――――
D「こうした質問の場で、よく「あなたはラングドン教授になりたい?」とか「ラングドン教授はあなたですか?」とか聞かれるのですが…教授は私よりもずっとカッコいいですよ。ずっと頭がいい。もっとエキサイティングですよね。そして”いてはいけない場所にいてしまう”人。…でもこんな風に答えていたらある人に「でも教授の行動やセリフはあなたが書いているのですよね」と言われました(笑)でもね、私はその文章を書くのに3日かかっているんですよ(笑)」
――――――――
講演会の感想
約2時間のイベントでしたが、内容盛りだくさんでとても楽しい時間を過ごすことが出来ました
最新作『オリジン』について、AIについて、科学と宗教について、現代芸術について…敬愛する作家ご本人の言葉で聞くことが出来、同じ空間にいることがちょっと信じられない感覚でした。
また、ダン・ブラウンさんの育った環境も知ることが出来、それは創作にそのまま繋がっているなとも思いました。おちゃめなお人柄は実際に目にして知ることが出来ました。
ダン・ブラウンさんはAIの未来(科学技術の発展の先)に関しては楽観的でした。
しかし、世界にはAI技術の未来を悲観的に見ている著名人もいます。
ホーキング博士(宇宙物理学者)は「完全な人工知能を開発出来たら、それは人類の終焉を意味するかもしれない」と語っているし、イーロン・マスク(実業家/テスラ、スペースX)は「人工知能にはかなり慎重に取り組む必要がある。結果的に悪魔を呼び出していることになるからだ。ペンタグラムと聖水を手にした少年が悪魔に立ち向かう話を皆さんご存知だろう。彼は必ず悪魔を支配できると思っているが、結局出来はしないのだ。」と語っています。そしてビル・ゲイツ(プログラマー)は「私も人工知能に懸念を抱く側にいる一人だ。」と言っています。
私はミスター都市伝説ことハローバイバイ関さんの都市伝説の話が好きなのですが、最近はAIについて警鐘を鳴らしています。「もうすぐAIによって人類は選別され、選別されたものだけが生き残れる」とか、「AIの秘密結社ゾルタクスゼイアンの不穏な動き」とか、「トランスヒューマニズム」についてとか…。
全てを鵜呑みにしているわけではないですが…
私は楽観者ではない側の一人です。(といっても何か行動を起こすわけではなく、陰謀論を「すっげー、たぁのしー」って聞いているだけですが)
また、今回の講習会で気になった事というか、もっと知りたいなと思ったのは仏教についてです。
そもそも仏教の教えについて知らないので、「仏教は科学と衝突しない」という部分が私の中で消化できていないのです。突き詰めるほどに、宇宙物理と絡まってくるという感覚を私ものぞいてみたいと思いました。
あと、イベント中は「池上さんすごいな~」と、「同時通訳の人すごいな~」としきりに思ったのでした。
おわりに
今回は本当に貴重な経験をさせてもらえたと嬉しく思います
行けなかった方にもダン・ブラウン大先生の魅力や、新作『オリジン』の魅力が伝わればうれしいです
サイン本買っちゃったわよ、あとね、Wrinkle in timeもアマゾンで注文しちゃった。
あぁ、積み本が増えていく…
今回はいつも以上に超絶長文になってしまいましたが…
最後までお読みくださった方、ありがとうございます
「まるこ頑張って書いたね~」「レポありがとね~」って思って下さった方、いいね!してってちょんまげ~
*イベント参加された方、「この部分間違ってるよ」とかありましたらお気軽にコメントお願いします。書き直します。
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参考出典
『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』 松尾豊 (角川)