こんにちは、まるこです
先日上野へ美術館・博物館巡りの日帰り一人旅してきました
今回巡った美術館・博物館一覧
(リンクで展覧会公式ホームページが開きます)
東京都美術館「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」(~2018.1.8)
国立西洋美術館・常設展内・版画素描展示室「《地獄の門》への旅 ロダン素描集「アルバム・フナイユ」」(~2018.1.28)
国立科学博物館「アンデス文明展」(~2018.2.18)
国立科学博物館・常設展内・企画展示室「南方熊楠 100年早かった智の人」(~2018.3.4)
今回の記事では古代アンデス文明展について感想やら書きたいままに書いていきたいと思います興味ある方どうぞお付き合いくださいませ
古代アンデス文明展概要
上野・国立科学博物館にて2月18日まで開催してます
詳しくは公式ホームページをご覧くださいこちら
アンデス文明とは
一口に古代アンデス文明といっても時代も地域もとても幅広いんですよ

カラル文化(B.C.3000頃~B.C.1500頃)…円形の神殿ピラミッドが建てられる(B.C.2000頃)
コトショ文化(B.C.2500頃~B.C.1800頃)
チャピン文化(B.C.1300頃~B.C.500頃)
モチェ文化(A.C.200頃~750/800頃)…レンガ造りの太陽と月の神殿が建てられる
ナスカ文化(B.C.200頃~A.C.650頃)…雨乞いの儀式に使われたと思われる複数の地上絵が存在する
ティワナク文化(A.C.500頃~1100頃)
ワリ文化(A.C.650頃~1000頃)
シカン文化(A.C.800頃~1375)…大量の金製品が作られる
それぞれの文化は単発に存在したというわけではなく、それぞれ過去の文化から技術や宗教の影響を受けて発展していきました。
印象的な展示
特に私の心を捕えた展示をいくつかご紹介します
アンデスの神殿と宗教の始まり
カラル文化の時期には農耕生活が始まり、初期の宗教も興ったのだそうです。
B.C.2000頃に建てられた円形の神殿ピラミッドがあるという展示映像には驚きました。古代エジプトと同じくらい古いピラミッドがアンデスにも存在したのですね
複雑な社会の始まり
地域ごとに独特な宗教が育ち、社会の統一が始まったころのチャピン等の文化が紹介されていました。
その中でチャピン・デ・ワンダル遺跡が紹介されていましたが、そこは水と豊作への祈願としての祈りの場と考えられているそうです。
ランソン像というジャガーの顔に髪の毛が生えた神が造形されていました。どうやらネコ科動物への崇拝の文化があったようです。また、宗教儀式用の装飾性の高い楽器なども展示されていました。
不思議な土器たち
何か意味ありげな不思議な世界観の土器たちの展示が印象的でした
おそらく儀式で使用したと思われるものが多かったのですが…
いくつか画像を撮って来たのでご紹介します

「牙を持つ人間型超自然的存在が儀式用装束をまとい、蛇の銅にネコ科動物の頭が付いた生物を両脇に従えて立っている場面を表現している。手を合わせて上を向き、あたかも天にいる何ものかと対話している(あるいは懇願)しているかのように見える。」
という説明文と共に展示された土器。
そのストーリーも興味深いですが、単純に可愛いなって思ったの
「自身の首を切る人物の象型鐙型土器」(チャビン)
「胴部で二股に分かれている注口が一つになる形をしたアンデス文明に特徴的な土器。首が180度ねじれたありえない形になっている。生贄の儀式に関係あるのかもしれない。」
という説明と共に展示された土器。
首の向きもおかしいし、切れた首を自分で持ってるし(キリスト教における斬首された伝説的殉教者かな)、切り口から頸動脈と思われるマカロニっぽいのがはっきり造形されてるところとかゾッとしました
儀式でこういうことをしていたのか、もしくはかつて実際に人の首を切っていたけど、この人形を作ることで犠牲の代わりとしたのか…謎は謎ですが、ある特徴的な信仰・文化が存在したことはとても興味深いです
「トウモロコシの穂軸の姿をした神を描いた土器」(モチェ)
「牙のある神がトウモロコシの穂軸の形をした姿、あるいは穂軸の中に身を埋めている姿をかたどっている土器。トウモロコシはモチェのみならず、アンデス全体で神聖な植物である。」
という説明で展示された土器。
これ可愛くないですか
豊穣・繁栄を願って、貴重な穀物の神を崇めているのだと思いますが、そうした彼らの神聖で真剣な思いと、私が受け取った「あら、可愛い」と思った印象のギャップが面白いなって思って思わず撮ってしまった一枚です
「裸の男性の背中にネコ科動物がおぶさった鐙型注口土器」
「神の従者であるオセロット(ネコ科動物)が、これから生贄にされる男性(裸であぐらをかいて座り、祈っているようだ)を抑え込んでいるように見える興味深い形の土器」
という説明の土器。
これも面白いですよね
私の受けた印象では、生贄の男性はこちらの世界の人ともあちらの世界の人ともどちらとも言えない中間にいて(今まさにちょうど死にかけている)、お迎えに来たオセロットがこれから連れていくところかなって感じました。
それでも男性からは畏怖の感情はあっても死への恐怖は感じられないなって思って、彼らの宗教観を垣間見たような感覚になりました。
このオセロットの表情がなんとも言えなく可愛いの
「死んだ男性と生きている女性の性行為を描写した鐙型注口土器」(モチェ)
「死体が生きた女性と性行為を行っている描写の土器。モチェの人々は死を生命の一段階と捉え、死者が生者と相互関係を○○する生活の○○な一部となっていた」
という説明の土器。
(※○○の部分は画像撮ったときにブレちゃって読めなくなってもうたのごめんなさい気になる方はアンデス文明展観に行って確認してちょね
ブレてるの自覚あったんだけど、この作品だけ一生懸命撮影してたらヤバイ人だと思われちゃう恥ずかしいって思ったら撮りなおせなかったの
)
これは一番の衝撃でしたね
いろいろ突っ込みどころ満載でどこから手を付けていいのか分からないのですが…
まず思ったのは「どんな儀式でどんな願いを込めて作って、どんな風に儀式に取り入れて使ったのかな」ってことでした。妄想が止まりません
画像の角度が悪くて分かりにくいですが、男性の股からニョキっと飛び出してますね
でもね、性行為を描写しているってのに結合しているのは男性の腕と女性の口なんですよね。西洋絵画でもよくあるけど、隠喩として直接的表現を避けて性行為を表現しているのか、それとも死者との交わりは腕と口を使ってという思想があったのか…う~ん、興味深い
文字を持たない文化
ところで、彼らは独自の文字を持っていませんでした。
その代わりに土器に図像を描いたり、紐に結び目を作ることで情報を記録したり独特の表現をしていました。
これは結び目によって主に家畜や織物の数を記録をしたと考えられるキープと呼ばれているものです。
数だけでなくもっと複雑な情報が隠されているという説もあるみたいなのですが全て解読できているわけではないらしく謎が多いのだそうです
ちなみに、なぜ文字がないのにキープにそうした情報が載っているということが分かるかというと、この地を征服したスペイン人たちの記録・報告によって明らかになっているのだそうです。皮肉です。
かつてヒエログリフがロゼッタストーンによって解読可能になったように、キープもいつか解読の手引きになるような何かが見つかってとんでもない情報が得られるようになったらと想像するとときめきが止まりません
人身供儀
ところで、アンデス地域には人身供儀の文化もあったのだそうです。
しかも捕虜を組織的に生贄にし、生贄獲得のための争いも存在したようです。
神のためなのか、信仰のためなのか、祈りを成就させるためなのか…とにかくそのための殺人や流される血はいとわないといった思想が感じられました。
アンデスだけでなく、古代文明の興った地では信仰に伴う生贄の文化があったことが多く知られています。信仰という高度な精神活動を行いながら、軽んじられる人の命もあったことに違和感を感じます。現代を生きる私(たち)との倫理観の違いを感じました。
ちょっとズレるかもしれませんが、神のために人を殺すという感覚は、現代の世界中で見られる「信仰を守るために 人を殺す、テロをおこす、自殺する」に繋がる危うさの始まりでもあると感じました。
信仰と芸術
今回の展示を見て強く感じたのは、人類史の始まりから信仰と芸術は始まっているということでした。
人が生きる上で信仰は重要なものなのでしょう。
人が意のままに出来ない存在(大自然、宇宙)への畏怖・祈り、様々な種類の恐怖から逃れたい気持ちが神を創り出し、信仰心を育ててきたように見えました。
そしてその信仰心・神への祈りを表現するために出現・発展したのが芸術なのだと思いました。
ダンスは雨乞いや子孫繁栄、収穫への祈りとして、絵画もまた収穫への祈りや子孫繁栄の祈りとして、土器には模様を描き、祭りそのものもまた神への奉納といった意味合いが大きいですね。装飾品も神への祈りのために必要なものとして発展してきたのでしょう。
アンデス文明の崩壊
アンデス文明はわずかな数で踏み入ったスペイン人によって略奪・征服され崩壊しました。
アンデスは非常に厳しく険しい自然の中に存在する文明でした。
彼らは彼ら同士が物や情報を行き来させるために、インカ道と呼ばれる総距離4万kmというとんでもない長さになる網目のように張り巡らされた道を作っていました。(4万kmといったら地球一周に相当します)
インカ道は山、砂漠、密林を繋ぎ、行き来を可能にしました。
しかしその便利な道は、敵の侵略をも通す結果となりました。
全体の感想
独特な宗教観がとても興味深く見ていて楽しかったです
神々と死者と人々が共に暮らしている不思議な世界でした
数千年前から数千年間に渡って繁栄・衰退を繰り返したアンデス山脈沿いの文明の数々は、完全に個別の文明ではなく、新しい文明は過去の叡智を受け継ぎ発展させる様子も見られたことは興味深かったです。
購入したグッズ
グッズと言っていいのか微妙ですが、この展覧会では画像のビールとコーラを兄へのお土産として買って帰りました
アンデスのビールは4種類(だったかな?)あって、その中で唯一黒ビールがあったのでそれを買いました。
私も一口貰ったのですが、普通黒ビールってコーヒーみたいな苦味ありません
でもこれはカラメルみたいな香ばしさと甘さがあってとても飲みやすくて美味しかったです
1本500円で高いなって思ったから1つしか買わなかったけど、アンデスビールって珍しいから全種類コンプリートしても良かったかも
もう一つはインカコーラ、と書いてあったやーつ。
説明読まずに安いから買ってきたけど家で表示確認したら「黄金の国インカ帝国にちなんで作られた黄色いコーラ」「原産国名アメリカ」って書いてあることに気付いてちょっとがっかりしてしまった
これはまだ開けてないのでどれくらい黄色いか分かりません
終わりに
今回はアンデス地域の古代文明を網羅した展示を見て来ましたが、知らなかったことばかりでとても面白かったです
今回もかなり長くなってしまいましたが最後まで読んでくださった方、ありがとうございます