『お芝居の巻』 からの続きで
今回は『舞踊の巻』 です。
最近の大衆演劇は、舞踊ショーの期待が高く
昔はそこまで舞踊ショーに重点って置かれてなかったようですが
近年では各劇団さん、舞踊ショーには趣向を凝らして
お客さんを楽しませてくれますが
特に女形への期待は大きいようです。
この前、ある座員さんが
『芝居は好きなんだけど、舞踊は...』
って言われまして
まぁ〜芝居が好きはいいけど、舞踊嫌いはねぇ〜
って話ししました(笑)
大衆演劇は、踊りが嫌いだと『お花』が付きにくくなりますからねぇ〜
(-_-;ウーン
ただ、役者さんにとって女形の舞踊って特に難しく
本来なら舞踊だけで仕事になるくらいです。
芝居も舞踊もって大衆演劇の役者さんって
本当に大変だと思います。
大衆演劇に入って来て、そこそこ芝居も覚えて
舞踊ショーは立役で、なんとなく踊れるようになってきて
次のステップが女形となるのが普通の流れですし
お客さんも、『そろそろ女形踊って〜』って
リクエストするようになったりしますよね。
しかし、ここの壁は結構高いです。
私は芝居より舞踊に方が好きでよく観ますが
女形が綺麗に踊れる大衆の役者さんは本当にいいですよね。
けど、女形は本当に難しいです。
何が難しいかと言いますと
女形は全身、意識としては頭から指先から全てに
神経が研ぎ澄まされてないと優雅には踊れません。
立役って結構、勢いで何とかなったりしますが
女形は勢いだけでは無理です。
特に女形で重要なのは『体幹』だと思います。
『体幹』とは、簡単に言えば身体の中心軸です。
この『体幹』が身体の中に出来てないと綺麗には踊れません。
女形はすり足で腰や頭の位置を一定の高さで移動して
身体の中心軸で綺麗に回ります。
これだけと言えばこれだけですが、これがとっても難しい。
特にすり足が出来てないと、ひょこひょこ歩くので
身体が上下に揺れます。
これでは優雅にはなりません。(女形の初心者がこれですね。)
足を軽く曲げた状態で、腰を落としてすり足で
腰と頭を一定の高さで移動するって、もの凄く下半身の筋力がいります。
それと、身体の中心軸がズレると綺麗に回転出来ません。
身体の中心軸がズレると、手や頭、腰や足がしっかりしません。
女形の舞踊の優雅さは軸がしっかりしないと
ゆったりした動きを支えることが出来ません。
これは速く踊れば、なおさら遠心力が付きますので
さらに難しくなります。
女形はかつらも着物も重いですからね。
女形の舞踊が上手い人が立役も上手いのは当然です。
立役を上手く踊るにも女形はとても重要なんです。
そのトレーニングが『体幹』です。
最近、舞踊が上手くなるにはどうしたらいいですか?って聞かれますが
そんな時は、バランスディスクがいいんじゃないの。って言ってます。
まぁ〜体幹トレーニング方法ってyoutubeにいくつもあるので
色々参考にされればいいと思いますが
狭い楽屋で手軽に出来て、バランスディスクに乗りながら
スマホが打てるようになれば、かなりのバランス感覚
すなわち体幹が鍛えられてるんじゃないでしょうかね?
https://www.youtube.com/watch?v=v3eD8U9D9Gk
結局これも、基礎練習ということです。
女形の踊りのレパートリーをいくつ増やそうが
基礎レベルでの舞踊を支えるとこをやらないと
いくらやってもアラが出るだけです。
この『体幹』ですが、これを鍛えると
芝居でも立ち姿がよくなります。
結局、『体幹』は、どの分野でも基本なんです。
もっと言えば、野球もサッカーもマラソンランナーも
身近だと自転車で、その上が一輪車ってとこです。
意外と大衆に近いのが、フィギュアスケートかな?
フィギュアも舞踊ですしね。
すり足でなく、実際にスベってますが
どんな体勢でも立つと言うより、足が少し曲がった体勢で
身体を支える事が多く
回転は体幹の極みと言う感じですね。
身体を使うものでは、この身体の軸というのが
備わってから、次にテクニックの話になるんです。
立役では殺陣も『体幹』からの技です。
『体幹』はとても大事なんです。
私は過去に 『早乙女 太一』くんを担当してましたが
彼の凄さは色気や見た目とかじゃなく
このズバ抜けた『体幹』の凄さでしょうね。
竹がしなるように、どんなに身体が曲がっても
下半身がぶれることなく元に戻れる下半身の粘り強さ
その体幹からくる回転の正確さ、それが備わってるので
あの優雅さや色気やらが出せる余裕が出るんです。
殺陣もこの体幹が成せる技です。
これはそう簡単には出来ません。
彼が小さい頃に、朝方まで厳しく練習していたのを知ってます。
世間では天才って言われますが
私の印象では、天才と言うよりは努力の人って感じです。
まぁ〜天才でも1日で出来る訳じゃないんですよ。
もう一人、努力の人と言えば
橘 大五郎くんも同じ時期に見てた人なので
大ちゃんも太一くんと同じ舞踊の先生にみっちりシゴかれてた人で
今はもうない、浅草の大勝館で舞踊をよく見ました。
大ちゃんの出番で客席ではこんなエピソードが...
『えぇ〜また風盆〜』
って言ってたのを聞いた事があります。
これは大ちゃんが踊る『石川さゆりの風の盆恋歌』です。
この頃、課題だったのか?この曲の頻度が高く
私も何回も見たのですが、お客さんは文句を言う割には
黙って見てるんですよね。
大ちゃんにとっては、課題なのか?何回も踊るし
当て振りではなく、ちゃんと振り付けされているので
踊れば踊るほど完成度は高くなり、舞踊の基本が叩き込まれていきます
見てる方も、どんどん完成度が上がるので何度見ても飽きないのです。
大衆演劇ではいろんな事が自由ですから
自分でいろいろ決められますけど
まだまだ舞踊に自信がなければ、曲数を絞って
当て振りではなく、ちゃんと自分なりに振り付けして
しっかりと自分のものにするくらい踊り込めば
自然と上手くなっていくと思います。
当て振りを毎回やってると
元の基本が出来てなければ逆に遠回りです。
ソロで踊る機会が少ないにも関わらず、毎回流行りの曲で
当て振りしてたんでは上手くなりようがないんです。
同じことを繰り返しやって、この曲なら自信を持って踊れる!!って
曲を少しずつ増やしていく方が踊りは上手くなります。
お客さんに、毎回同じ曲で〜って思うのは自分だけ
下手な流行りの曲で踊られるより
上手い踊りなら、同じ曲でも何度も見たいんですよ。
大ちゃんや太一くんの舞踊の上手さも
この時期の基本練習の賜物だと思います。
女形はこの『体幹』に舞踊としての基本がいりますし
関節の柔らかさとか首や肩や腕、足腰のしなやかさとか
いろんな要素がいるので
一朝一夕で上手くなんてなりません。
女形が上手い人は、
子供の頃からやってる人が多いのも
修練にはとても時間がかかる。と言う事です。
1日で出来る天才なんて、いないんです。
それと、床山の私からちょっと言わせていただけるなら
舞踊ショーのかつらを派手にとか、人と違うものとか
まぁ〜かつらに神経を使ってこれさえあれば!!って人がたまにいますが
派手なかつらとか、人目を引く物をかぶって出ると
それに見合う舞踊の技量がないと、かつら負けします。
実際、かつら負けというか扮装負けですかね。
見掛け倒しってやつです。
あぁ〜あの色のかつらかぶってた人? とか言われたら役者さんの負けですね。
厳しいこと言えば、自分の技量の無さを
物でカバーしても結局は長続きしません。
派手なかつらや、人と違うことをするっていうのは
その人の技量や雰囲気、お客を巻き込む力があっての話です。
かつらや着物の品評会ではないので、
物に頼らず腕を磨ければ
お客さんにはすぐにわかってもらえます。
最初はお金も無いでしょうし、高いかつらにメンテも高くなるようなら
相舞踊で綺麗にシンクロさせてみたり群舞揃えたりした方が
お客さんへのアピールは全然良いですよ。
派手なかつらや衣装はその後で十分です。
最近は、先に形ばかりに目がいってる人が多いかなぁ〜???
地味で先はとても長く、上手くなっていってるのが
本人にはわかりにくいのですが
コツコツ努力していれば、必ず上手くなります。
逆にやらなければ、いつまで経っても上手くはなりません。
修練に近道なんてないんで。
あまりTwitterなどでも、
この人〜とかあまり言ったことがないのですが
(あっ?最近、何人か言ったかも〜?)
私が見た中で舞踊の上手い女性の大衆演劇の方を何人か紹介します。
男性を紹介しないのがミソ(笑)です。
まぁ〜男性の大衆演劇の方で上手い方は何人もいますし
私が言わなくても知ってますでしょうから
あえて女性の方の紹介です。
最初は、この方は私が紹介しなくても知ってる方も多いですし
実力も独自の世界観もちょっと真似出来ませんねぇ〜
「橘小竜丸劇団」 鈴丸座長
「満劇団」 大日方皐扇
それから、番外編 という事で
「森川竜馬劇団」 桜美はるひ