当直が続きさすがにかなりヘロヘロ。
ですが今夜は出版社との打ち合わせがあったので夜も仕事です。
さて、
『コウノドリ』第2話、
交通事故にあった臨月間近の妊婦さんとその家族の話。
涙無しでは観られない物語でしたね。
私達産科医が毎日と言っていいほど直面する問題が、
『絶対の正解がない選択』
です。
今回の第2話の中では「妻の命とお腹の子供の命、どちらを優先するか」という残酷とも言える選択が夫一人に課されました。
どちらを選んでもとても重い選択で、その人の一生に響くことになることはほぼ間違いないと思います。
どちらを選んでも、少しの後悔も残さないということはないでしょうから。
ドラマの中では見かねた妊娠さん自身が自ら選択してくれたようにも見えましたね。
私達の現場でも、小さな治療一つから、母児の命に直結するような大きな問題まで、
毎日のように「100%の正解が無い問題」が課されます。
人体を扱っているのですから、この点は他の科も同じかもしれません。
長い歴史の中で確立された医学的事実や治療法で妊婦さんにすすめられるものならば、もちろんそれを提案させて頂きます。
しかし、現実はそうではない問題にも多々直面することも少なくありません。
そして、その治療法などを選択するかどうかは、妊婦さんご本人、ご主人、ご家族に委ねられる事になります。
選択権はご本人とこ家族にあるのですから。
私達医師は、今までの情報・データをフルに集めて、その事実を伝えることのみ。
その上で考え選択するのはご本人とご家族です。
一見無責任に見えるかもしれません。
冷たく見えるかもしれません。
しかし、今後の人生を歩むのは私達医療スタッフではなくご本人とご家族、そして赤ちゃんなのです。
「先生ならどうしますか?」
そういった時、患者さんによく聞かれる質問です。
答えは医師によって様々でしょう。
私は明確な答えは敢えてお伝えしません。
私自身と、その妊婦さん・ご家族は、全く同じ人生を歩んできたわけではなく、また現在のバックグラウンドも異なり、今後の人生も違うものになる。
私はその方たちにはなり得ないからです。
私が答えてしまうことで、少しでも誘導になってしまってはならないと思うので、自分の意見を言いたいところですが、敢えてはっきりと言うことは控えています。
時には残酷な選択であることもあります。
医師だって人間です。
辛い気持ちは人前で表面には出しませんが、辛く感じたり、なんとも言えない重い気持ちになったり、悔しい想いをした事は何度もあります。
特に産科医になりたての頃感じた悔しさは絶対に忘れられません。
四宮先生の
「ラッキーだったな」
という言葉はあながち間違っていないのかもしれません。
あなた、もしくはあなたのお子さんがこの世にいる事は、
あなたのご両親、もしくはあなたやあなたのご家族の選択がより良い方の選択であった結果なのかもしれませんね。
こういった意味でも、私達の現場は「常に奇跡との向かい合わせ」なのです。
自分がこの世に産まれてきた事、
自分が子供を得られた事、
今回の第2話のテーマを通じて改めてその奇跡に感謝して頂けたら、いち産科医として嬉しく思います。
※本ブログの内容はいち産科医としての個人的な意見・感想です