波が足元に押し寄せる

海に溶けた青色が、夏の気配を連れてきていた

もうすぐそこに夏がある気がして

その青と、青に魅せられた高揚を混ぜ合わせて、

切り取りたくなった

それを持ち帰れたのなら


青が簡単に切り取らせてくれるわけもなくて、

その思いに夏の匂いがした



「初夏」




夏になるよりも前に海に行った時のことでした


波打ち際に裸足で立っている時に、目に映っていた春の終わりの海が、空気が、夕方の空が、光が、人が、そこにある空間のすべてがやけに青色に見えて仕方なくて、それがとても好きだなあと思って、この空間ごと切り取って家に持ち帰りたいと強く思ったのですが、そんなどうやったらいいのかわからないことは当然出来なくて。笑


写真に撮ってしまうのもニュアンスが変わってきてしまってなんだか違うし、あれは場のもので、生もので、そこで感じて、味わい尽くして、覚えておこうとすることしかわたしには出来なかったのでした


きっとこの空間をそのままに描くことは出来ないけれど、この幻影のような青に魅せられたわたしの気持ちは描き残すことが出来ると思ったので、新しく描く作品はこの青色にしようと波に足をつけながら思っていました


そんなことを思っていると、たぶん気のせいだったけれど初夏の匂いがした気がして、この青い作品が出来上がったら、「初夏」と名前をつけようと決めて帰ったのでした




春の終わりの頃の話です


結局完成したのはちょうど初夏でした



夏の終わりだからこそ、もう一度思い出したくてこの作品を紹介してみました波



夏の始まりにこの作品が描けていたから、わたしは今年の夏を楽しめたのかもしれません



みなさんの今年の夏はいかがでしたか?飛び出すハート










抽象画「初夏」の詳細はこちらからカキ氷