お父さんと電話で話した翌日、娘を連れて実家に行った。
実家には、少しくたびれた父と、不安そうな母がいた。
お父さんは相変わらず咳き込んでいる。
肺炎の薬は効いているんだろうか、聞いてないならやっぱり・・・と不安が増した。
「お父さん、検査うけるっちゃろ?」
実家についてすぐ、昨日の念を押すように聞いた。
「う~ん。知り合いに話したら、もしかしたらその咳は喉から来てるかもしれないから、
耳鼻咽喉科に行ったら?って言われて。いい先生を紹介してもらったから明日行ってくる。」
私は、検査でなくとも病院に行ってくれるならいいか、と頷いた。
「そっか。でも、どちらにせよ今月中には検査に行ってね。お願いね。」
もう一度だけ念を押し、明るい話題に話を変えた。
娘が保育園でどうだったとか、昨日の夜ごはんに何を食べたとか。
誰も傷つけない、誰も不安にならない話を帰るまでずっとしていた。
数日して、お父さんから電話がかかってきた。
「もしもし・・・がんじゃないって言われたよ。病院の先生笑ってたよ。」
耳鼻咽喉科に行ったら、のどの炎症ですと言われたらしい。
「そうやったと?心配したやん~」
がんかもしれないといった医者の話は忘れて、かんじゃないという医者の言葉に安心した。
なんだ、ただののどの炎症だったのか。やっぱり、がんじゃないよね、そうだよね。
心で何度もその言葉を反芻した。
よかった、お父さんはがんじゃない。
前回の電話のときとは違い、明るい声でお父さんは話す。
「鼻から薬を塗ってもらったよ。そしたら咳が減ったんだ。やっぱりがんじゃなかった。」
「よかったね、よかったね」
と言い、お互い明るい声で電話を終えた。
検査のことはもう頭から忘れていた。