ドライヤーや基礎化粧品の塗布等が終わった頃『よくなったら教えて』とLINEが届く。

きっと今までもZは自分本位だったはずだ。
私が変わったのか、我慢し過ぎてキャパシティーを超えたのか…、この巡業からのよく分からない行動のせいなのか、何故だがモヤモヤとイライラの間のような何とも言えない感情になっていた。
返事ができないでいると『まだ入ってるのかな?』と。
『終わってます!』と返す。
『じゃいこうと思います』
偶然なのか同様に改まった様な文言を見て(あかん、不機嫌は相手に伝わってしまう。気持ちを昇華させんと…)と『はぁーーーい。お待ちしております!』と返事をし、鍵を開けに行く。




暫くしてZが部屋にきた。
いつも通りすぐにシャワーを浴び、その後顔のお手入れをする。
お手入れ途中「ここって何て名前のホテルだっけ?」と聞かれたので「えーっと…」と顔を挙げるとZは右手にiPhoneを持ち誰かとLINEをしていた。
*パック以外のお手入れ中はZの顔を見ており、あまり周りは見ていない*

見る気がなくても私から画面が丸見えで、奥さんの旧姓フルネームが平仮名で表示されている。
(隠せよ…。初めの頃は他のファンの女の子とのやり取りさえコソコソしてたのに、奥さんとのLINEまで隠さんくなったん?)と驚いていた。

○◎ホテル」と答えると「ありがとう」と少しの間奥さんとのやり取りを続け、LINEが終わると「Q県同じホテル取れたんだね」と言ってきた。
「うん。取れた」
「よかった。2日もあるし休養日も挟んでるし、どこ行く?何食べ行く?」と。
「え?どっか行けるん?」
「行けるでしょ?美味しいラーメンとかあるかな?」
「私Q県初めてやし、調べてみるっ!」
「あんまり遠い所とか人が多いとこは無理だよ?」
「わかってる」
(一緒に観光とかは難しくてもドライブぐらいしたいな)と、密かに思ってはいたのでZから外出、外食について言ってくれすごく嬉しかった。

お手入れが終わるとそのままツインベッドの窓側のベッドにうつ伏せで寝転び、足を広げてiPhoneをずっといじっていた。
(せっかく一緒におるのになぁ)という寂しさはあったが何も言わず、私も何となくiPhoneを見ていた。
すると、Q県のホテルからメールが届いている事に気付く。
詳細な内容は覚えていないが、メール内容に疑問を感じホテルへ電話を架けた。

「洋室でのご用意ができない」「和室になる」といった内容だった為「少しお待ちいただけますか?」と電話を遠ざけZに「洋室いっぱいで和室しか無理やねんて…。和室でもかまへん?」と尋ねると「俺は何でもいいよ」と言う。
「もしもし?お待たせ致しました。和室で大丈夫なのでこのまま予約お願いできますか?」とその場で予約の継続?確定?を依頼する。
「洋室は60000(千円以下の金額は失念)円でのご案内だったと思うのですが、和室だとお2人で一泊目が○○円、二泊目が○○円ですが、よろしいでしょうか?」と見事に何故か金額の部分だけが聞こえなかった。
「すみません、聞こえなかったので和室の合計金額を教えていただけますか?」
「あ、はい。○○円でございます」
また金額だけが聞こえない。
(和室の方が安かった気するねんけどなぁ…。てか、万が一洋室より高額であってもこのホテル以外の選択肢はZの中にはないし)と思い、「わかりました」と答え終話した。

(確か和室の方が安かったとは思うけど、私が見てたプランと違うくて1泊10万とかやったらどーしよー!2泊で10万でも無理やわ!!)と心臓が少しバクバクしてしまう。
そんな私に気付くことなく「大丈夫だった?」とZ。
「うん。和室やけどとれた」と返事をすると「よかった」とまたiPhoneを見た。

(仲良くなり始めの頃、嘘かほんまか知らんけどホテル代の半額払ってくれようとした時「好きで来てるから」って断って「Zが来てって言うた時は払ってなぁ」って約束したのなんか忘れてるよなぁ。受け取り方も分からんし、言われても受け取らんけど、嘘でも少し払おっか?とか言えれへんのけ?)から始まり、「次は払うね」「次は絶対払うね」と言い続けていたが、保湿クリーム代も結局1度も払ってもらった事がない等、私の中の常識とかけ離れ過ぎていて引いてしまっていた。