「おじさんとの約束」をしっかり守るべく、毎朝3時に起きて必死に新聞を配達したマルヴィス…


そしてドラムセットがマルヴィス家へ届く。


マルヴィス家は狭い平屋の一軒家だったが、マルヴィスが中学生になるちょっと前に、なんだか二階を付け足しただけのヘンテコな家に変身していた。


だが、中学生になったマルヴィス君専用のお部屋はなかったのでした。


アニヴィス1号2号が広めな部屋を共有。そしてアネヴィスが狭い部屋を占領。


して、マルヴィスは…


寝る時以外はどこでも出入り自由。


寝場所は?というと…今でいうならリビングてなもんなんだが、実際は玄関を上がり、引き戸をガラガラと開けると、すぐそこにマルヴィス君が寝ていると云う、板の間がマルヴィスの寝床だったのです。


そして念願のドラムセットが我が家に届きました。

しかし、マルヴィス専用部屋がないためセッティングが出来ない…


しかたがないので、ひとまずアニヴィスの部屋に運び、おじさんがセッティングしてくれたのです!



絶景だった!!



マルヴィスはドラムセットに、ただずっとずっと見惚れていた。


おじさんはニヤニヤしながら「早く叩いてみろ」とマルヴィスをせかす。


マルヴィスは緊張した…


それから、10分くらいだろうか…マルヴィスは周りをかえりみず、一心不乱に叩きまくったのでした。



この時のおじさんの嬉しそうな笑顔は今でも忘れられない…


あれから40年弱の歳月が立つが、今でもおじさんの顔だけは誰よりも鮮明に覚えている。




逢いたい…







そして、マルヴィスはおじさんに礼を告げお見送りをし、即2階へ…またバカバカ叩きだした。



忍び寄る母ちゃんの気配…





うるさい!!!





母ちゃんは、ドラムセットがこんなに広く場所を取り、はたまた、こんなデカい音を出す代物だとはちっとも知らなんだと、嘆く嘆く嘆く。


そして、まず母ちゃんは隣近所にご迷惑かけましたと、恒例の掛けずり回り。


母ちゃんは「中学生になったってのに、なんでまたご近所に迷惑をかけるかね!このバカむすこは…」と、また嘆く嘆く嘆く嘆く。


そして、その晩マルヴィス家恒例の家族会議が大々的に開かれた。



ドラムセットが届いたその日に、すでに大ピンチな中坊マルヴィス…




問題は騒音と置く場所である。




当時アニヴィス1号は大学を卒業しパイロットを目指していたため、その専門大学へ入るための受験勉強真っ最中だったのでした。

しかし、どう考えてもドラムセットを置く場所はアニヴィス達の部屋しかなかった。


そして、ある結論が簡単に出た。



アニヴィス1号が来年大学に合格するまでは、ドラムを叩いてはならず。


納得がいかないマルヴィス…

庭ではダメか?玄関は?と、無駄な抵抗を必死にしたがすべて却下。


そして、母ちゃんからマルヴィスへ判決が言い渡された。


来年アニヴィス1号が合格するまでは、ドラムは叩かない事。

その代わり、来年無事にアニヴィスが合格したら、アニヴィスはこの家を出るから、そしたらマルヴィスはアニヴィス1号の後がまに昇格!そうなったらドラムをセットしたままでよし!


と、その代わり…の文句に非常に弱いマルヴィスは、まんまと丸め込まれたのでした。



そんなこんなで、念願のドラムセットを叩けたのは届いたその日だけだったのである(笑)




だが、それでもマルヴィスはバラバラのドラムセットを毎日毎日眺めているだけで大満足だった。


これから、10ヶ月は必死に新聞配達をして、中学二年生になればアニヴィス1号は出ていく…そしたら、自分の部屋が出来て、ドラムもセットしたままでいい…だったら、それまで辛抱する事など屁でもない。


と、思いつつも、ただ一つ不安がよぎる…


アニヴィス1号にまた浪人生活をされたら、たまったもんじゃないと。


なので、マルヴィスはアニヴィス1号の受験勉強を一切邪魔しなかったし、頼まれてもいない夜食(ゆで玉子)を勝手に茹でて「こんなに茹でてどうすんだ!」と母ちゃんに叱られながらも、必死にアニヴィス1号を応援したのである。


そしてマルヴィスはアニヴィス1号に対して「勉強をサボるな!そして早く出で行け!」と心の中でつぶやき、毎日アニヴィス1号がサボってないか監視し続けたのでありました。




ドラムと野球しかしない、こんな中坊マルヴィスは野球部に入りました。そしてマルヴィスのポジションはキャッチャー。


たしか新入部員が30~40人居ましたが、キャッチャー志願はマルヴィスただ1人…

初日新入部員全員がグランドを何十周も走らされている傍らで、マルヴィスだけは先輩とキャチボール…


なんとこの野球部のキャプテンはキャッチャーで、他の部員の中にキャッチャーが1人も居なかったのである。


なので、初日からマルヴィスだけ特別待遇だったのだ。

他の新入部員なんてシゴキまくられ、初日で半分はやめていった。ま、当時の部活なんてシゴキが当たり前だったから、こんなもんである。



金の卵 マルヴィス!!



シゴキなし玉拾いなし、即 補欠レギュラー&ガラの悪い頭悪そうな先輩から可愛いがられる


どこまでもラッキーなマルヴィス君!



ラッキーマルヴィス、朝3時に起き新聞配って、ドンブリ納豆飯三杯食って、即家を出て野球部朝練へ!

そして授業中は起きてるフリして寝て、放課後野球部の練習!

それから家に帰りドラムセットを眺めつつアニヴィス1号を監視!


と、こんな1日を約1年バカのひとつ覚えで繰り返すマルヴィス。



そして、年が明け「おじさんとの約束」も見事に成し遂げ、あとはアニヴィス1号の合格を願うのみとなる。



そして、アニヴィス1号 見事に合格!!




こうして、中学二年生になったマルヴィスはこの時点での、すべてを手にいれる事が出来たのです!!


騒音の問題も「おじさん」が色々工夫してくれ、決められた時間ではあるが、なんとか音を出せた。



ドラム叩けるわ、野球部レギュラーだわ、モテるわ、でハッピーマルヴィス…




が、しかし…この年の夏、一大事がマルヴィスの身にふりかかる…




次回へつづく。