「『自動加入』は人権侵害とは言えない」(By神奈川県教委)※追記あり | まるおの雑記帳  - 加藤薫(日本語・日本文化論)のブログ -

「『自動加入』は人権侵害とは言えない」(By神奈川県教委)※追記あり

<神奈川県教委からの再々回答(3/25)>の続報です。

前記事で次のように述べた。
***
ご自分たちの言い分が成り立たなくなった途端に、「結論は出ていない」論を振り回すのはおかしくありませんか?!

自動加入のPTAを優良PTAとして選出する以上は、「自動加入」が消費者契約法上も、また人権擁護の観点においても、なぜ問題にはならないのか、ご説明いただきたいと思う。
***

先週の金曜日(3/26)、↑の要請を電話にて直接伝えた。年度末のお忙しい時だろうし、前回ずいぶん時間をとらせたので、質問だけ伝え、すぐにご無礼しようと思っていたら、「ブログで『アンフェア』だと言われているが納得できない」という話になり、また話し合いになりました。

どうやら神奈川県教委の言い分としては、
***
曰く、消費者契約法の事業者にPTAは該当しないと消費者庁より言われた。
曰く、その学校の保護者のみんなで考えたことには新入生の保護者は従う必要があるのではないか。
(前記事より引用)
***
という、(すでに取り下げているだろうと当方が思っていた)主張は今でも有効であるという認識のようなのだ(驚)。

前者については、「該当しない」というのは言いすぎだったかもしれないが、依然として「PTAは事業者として確定してはいない」という主張だ。つまり、「法に触れる可能性がある」ことは認めるものの「確定はしていないでしょ」と。
“「法に触れる可能性のあること」はやめよう”とする「良識」を求めても無駄なようだ…。

後者については、つい口にしてしまっただけで、当然のこと撤回してくれたものとばかり思っていたのだが、取り下げるつもりはないようなのだ。


担当のYさんの説明を再現してみよう。
まず、次の命題(命題1)は文科省の係長氏も認めてくれていると言う。

**
(命題1)
PTAに関しては、入会を含めたPTAのありかたについては、それぞれのPTAで判断すること。
**
担当のYさんが「そうですよね?」と確認すると、
文科省の係長氏は、「そうです。」とはっきりと答えたそうだ。

で、ここから神奈川県教委は、次のような命題(命題2)を導く。

**
(命題2)
PTAの決めごとは、新入生の保護者(PTA未加入者)に対しても、そのPTAの判断により適用しうる。
つまり、そのPTAが自動加入方式を採用し、それを当該学校の全保護者に適用することを決めたのなら、その決定は効力を持つ。
よって、自動加入方式は、人権上問題であるとは言えない。
よって、自動加入方式のPTAを優良PTAとして選出することに問題はない。
**

どう思われますか?
わたしは、命題1と命題2には大きな隔たりがあると思うのだが、神奈川県教委は「隔たりはない」と言うのです。

ちなみに、この判断(命題2)は、担当のYさん個人の判断ではなく、神奈川県教委生涯学習文化財課で検討したうえでの判断だそうです。

なぜ法的な根拠のない一社会教育関連団体が、会員でない者、つまり「未会員」の行動を縛れると言うのでしょう??
人権(自由権、自己選択権)をいったいどう考えているのでしょう?
全く信じられない思いです。

しかし、考えてみると、「自動加入方式」を正当化しようとするならば、”そう言い張るしかない”のでしょうね。

しかし、しかし、公務員がこんなこと言っていいのでしょうか?
憲法99条には、

「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」

と「公務員の憲法尊重擁護の義務」が書かれています。
公務員が国民の思想信条の自由(憲法19条)をないがしろにすることを言っていいのでしょうかね。

神奈川県教委も横浜市教委も、この問題を最初に問いかけた時、「実態がそうなっていますから」と言いました。
実態が憲法の求めるものに反するならば、それを容認、追従するのではなく、是正する努力が求められるのではないのですか。公務員には。
それが、「憲法を尊重し擁護する」ということではないのでしょうか。

ちなみに、Yさんが所属する生涯学習文化財課社会教育班の職務には「人権教育の推進」があるのですよね…。


PTAには「自動加入」を行う権限があるのか?
こんなことは、論ずるまでもないことだと思っていましたが、神奈川県教委は「ある」と言います。(だから、自動加入のPTAを優良PTAとして選出することに問題はないと。)

この問題、私なりに、弁護士や法務省の人権擁護局等に確認し、神奈川県教委のスタンスの是正を改めて求めたいと思っています。

皆さまのお知恵もぜひお貸しくださいませ。
(神奈川県教委の言い分は正しいのではという意見も大歓迎です。)


なお、担当のYさんは3/24に文科省に問い合わせたそうです。
一つは、「自動加入」のPTAを優良PTAに推薦していいかどうかの再確認。
Yさんが言うには、今回【も】「構わない」と言われたと。
(まるお注:わたしはわたしで文科省の係長氏から「自動加入を容認してはいない」と何度もこの耳で聞いています。私見では、神奈川県教委のYさん(たち)は、今回の命題1から命題の2を導くような、ご自分たちに都合のいい「飛躍」を行っているように思っています。
あるいは、文科省の係長氏が極めて「ずるい」対応をしているのか…。
文科省の係長氏にぜひ確認したいところです。)

もう一つは、次年度の優良PTAの選出基準に大きな変更はないかの確認。
文科省の答えは、「特段の変更はありません」。

追記1
ここでのテーマにもろ関連するエントリをカワバタさんがブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」に書いてくれていますね。
<今さらですが、PTAの自動加入がいけないわけ。そして、退会条項が必要なわけ。>
もうお読みの方が多いと思いますが、必読です!


追記2
自動加入の不適切さをめぐる「つぶやき」集
・論点はもはや、任意かどうか、ではなくて、任意は当然なのだけど、会員に周知するか隠しおおせるか、なんですね(笑)。 (カワバタさんTwitter)

・自動加入を認めることは、法令ではなく、「先輩たちの決めたことには従うべき」というムラの掟で動いているということ。(里山たぬ子さん)