ここしばらく、丸山夏鈴さんの人生に思いを馳せている。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%B8%E5%B1%B1%E5%A4%8F%E9%88%B4

丸山夏鈴さんは、1993年生まれのアイドルで、2012年に芸能活動を始めて以降、自分の人生をアイドル活動に注ぎ込み続けたと言っても良い人だ。

 

https://toyokeizai.net/articles/-/582588

この記事を見て、数年ぶりに丸山夏鈴さん(以下、夏鈴さん)という名前を思い出した。この記事で夏鈴さんのことに興味を持ったのがきっかけで、ここしばらくは、彼女のブログやTwitter等を辿って、夏鈴さんの辿ってきた足跡に思いを馳せるのが習慣になっている。(東洋経済の上記シリーズに関する古田雄介さんの仕事ぶりにも、この場を借りて敬意を表したい。このシリーズ、良い意味で淡々としている所が良さだと思う。)

 

私が夏鈴さんのことを知ったのは、恐らく2014年頃のことで、いくつかのテレビ番組で彼女のことを取り上げていたタイミングだったと思う。その頃から心の片隅では夏鈴さんのことが気になってはいたものの、ライブを見に行くとか、CDを買うとか、そういう形での支援はしたことが無かった。そうこうしているうちに、2015年5月23日になって、インターネットで夏鈴さんの訃報を知った。当時、私も忙しく、そのうち夏鈴さんの存在自体を一旦忘れてしまっていた。

 

私の姉は、2008年の夏、当時まだ20代のうちに、広い意味では夏鈴さんと同じ病が原因で、夏鈴さんが今居る方の世界に旅立っている。2014年に闘病の様子を知った際や、2015年に訃報を聞いた当時、夏鈴さんのことを詳しく知ろうとする気になれなかったのは、2008年から7年しか経っておらず、若い女性の闘病という話題に触れることに躊躇があったのかもしれない。また、2015年5月当時は夏鈴さんの出来事が大いに話題になっており、夏鈴さんについて検索すると、心ない言葉の数々を目にすることもあった。あるいはそのことも、私を夏鈴さんの話題から遠ざけたのかもしれない。しかし、それから数年が経ち、私もいくらか人生経験を重ねたからか、今回は「夏鈴さんの足跡を辿ってみよう」という気持ちになれたのだろう。

 

それから約7年、冒頭に貼った東洋経済の記事が、彼女の存在を思い出させてくれた。その記事では、夏鈴さんのブログが紹介されていた。このブログは今でも大半の記事が閲覧可能で、私のように、後追いで夏鈴さんに興味を持った者でも、夏鈴さんのアイドル活動の流れを追体験することができる。

 

https://ameblo.jp/pukarin-cho/

 

このブログを見て、まず何より、夏鈴さんの文章力に惹きつけられた。病気のこと、活動休止のことなど、シリアスな話題のときには、サラッと、しかし事実をきちんと、分かりやすく伝えてくれる。一方で、何気ない日常については、感嘆符や顔文字、絵文字などをうまく使いこなして、楽しそうに伝えてくれる。この使い分けはきっと意図的なものだったんだろうと思う。職業柄、当時の夏鈴さんぐらいの年齢の若い女性と接することもそれなりに多いが、夏鈴さんの文章力は、同年代の女性(もちろん男性を含めても)の中でかなり高い部類に入ると思う。夏鈴さんの文章は、難しい言葉やカッコ良い表現を使うことではなく、相手にどう伝わるかを重視していることが分かる文章だと思う。

 

この「かりんの夢への階段」には、20歳前後の女の子らしい他愛も無い話やアイドル活動に前向きに取り組む姿が大半を占めている一方で、既に人生を深く見通しているような話が時折ふと出てきたりもする。また、私のような平凡な精神力の持ち主ならとっくに折れてもおかしくないような出来事が夏鈴さんには何度も押し寄せていることも分かるが、それでも、夏鈴さんは立ち上がり、笑顔や前向きな姿を見せてきたことも分かる。

 

Twitterでは、ブログ以上に茶目っ気が全面に出ており、ブログとはまた違った良さがある。そして、元生徒会長という肩書きやブログの文章力からは想像できないようなホワホワした話し方にも、また違った良さがある。普段アイドルにはあまり興味がある方ではないが、アイドルに興味を持つ人、現場に通い詰める人の気持ちが少しだけ分かった気がする。

 

夏鈴さんと言えば「決してくじけなかった強い人」というイメージで語られがちだが、夏鈴さん自身は「自分は強くない」という趣旨の発言を残している。このことについて、私個人は、弱さに向き合うことこそが強さだと思っている。この考え方は、私が好きなマンガである「ジョジョの奇妙な冒険」の名言にも影響を受けている。名言の中身を意訳すると、「恐怖を乗り越え立ち向かう人間の姿こそが勇気であり、それこそが人間の美しさだ。」というような趣旨になる。『Eternal Summer』の「急に迫る白い波にバランス崩さないわ」というフレーズにもあるように、何度も押し寄せる困難に立ち向かった夏鈴さんの姿こそが、まさに勇気であり強さだと思う。

 

「かりんの夢への階段」や夏鈴さんのTwitterを読むと、今さらながら、1度ライブやインストアイベントに参加したかった、という気持ちがわき上がったりもする。しかし、私はアイドルファンではなく、乃木坂とかそういうメジャーアイドルの有名メンバーぐらいしか顔と名前が一致しない。そのため、夏鈴さんのことを最初に知ることができたのは2014年の10月か11月で、本人に直接会えるとしたら2015年しかチャンスがなかった。2015年の夏鈴さんのライブやインストアイベントに行き、本人のひたむきな姿を目の前で見たら、どうしても姉の姿が重なってしまい、私は人目をはばからず号泣してしまったと思う。夏鈴さんは客に泣いてほしくてステージに立っていたわけではないに違いなく、そう考えると、私は行かなくて正解だったとも思う。

 

最近、仕事の合間の疲れた時などに『Eternal Summer』を聞いている。『Eternal Summer』は、さわやかで甘酸っぱい恋の歌でもあり、夏鈴さんのアイドル活動のテーマソングでもあると思う。この曲を聴いていると、心なしか気分が落ち着いてくる。私には夏鈴さんのような勇気や行動力は無いかもしれないが、それでも、『Eternal Summer』を聞いて落ち着いた気分になると、自分自身の100%には近づける気がする。ちなみに『あなたと私』は、聞けば聞くほど、2015年以前から夏鈴さんを応援していた「夏鈴党(夏鈴さんのファンの総称、この総称もまた絶妙だと思う)」の皆さんのための歌に思えてきて、私が聞くのは何だか申し訳なくなる。今のところ『Eternal Summer』ほどは聞いていない。

 

夏鈴さんは「アイドルが死ぬときって完全に忘れ去られたときだと思う。」という名言を残している。今年になって『Eternal Summer』が初めて配信されたということは、夏鈴さんはまだ「アイドル」だと思う。そして、今年になって初めて夏鈴さんのことをきちんと知った私が言うのもどうかとは思うのだが、夏鈴さんには少しでも長く「アイドル」で居てほしいとも思う。世界中でたった1人でも、これを読んで夏鈴さんに興味を持ってくれたら、私としては本望だ。

 

今一番言いたいことはほとんど言い尽くした。もし、また何か言いたいことができたら、新しい記事を投稿したいと思う。