坂東三十三観音霊場の第十九番札所・大谷寺の所在地は栃木県宇都宮市大谷町一一九八番地です。
先に説明しましたように、大谷石の産地として有名な大谷町です。
大谷石は建築用として使いやすいことが昔からよく知られていたようで、天平年間には下野国の薬師寺や国分寺の礎石に使われていたとのこと。
そのような場所だからこそ、石仏が作られたともいえるでしょう。
お寺の説明でも、ガイドブックにも、ここの石仏が日本最古であると書かれています。
この近辺の洞穴では一万一千年前の人骨だの、縄文時代の土器や石器が発掘されています。それら発掘されたものは、大谷寺境内の宝物館にあります。
そのような歴史のある場所に作られた札所ですから、霊場と呼ぶにふさわしいといえます。
本尊は弘法大師が一夜にして彫ったと伝えられる千手観音の磨崖仏。像高三メートル八十九センチ。かつては全体に朱を塗り粘土でかたちを整え、さらに漆を塗って金箔を押したという、荘厳華麗なものであったそうです。が、江戸時代の火災で焦げ落ち、今は岩肌のみとなっています。
しかし、色が塗っていなくても、それはそれで、じゅうぶんに魅力的であります。金属製の仏像よりもむしろ石仏や木彫りの仏像の方が、その内側からにじみ出るような生命力みたいなものを感じます。
この大谷寺の本尊は弘法大師の作と言われるだけに、かなり時代がかった御姿です。天平時代に大谷石が下野の薬師寺や国分寺の礎石で使われたというように、この像自体が天平時代の様式を伝えており、さらにいうならば、磨崖仏ということもあり、まるでシルクロードでみられたような仏像かとおもわせるような雰囲気さえあります。
本尊が拝観できる本堂は、一見すると普通のお堂の造りのようですが、実際、岩壁に作られた本尊を拝観するためのものという形になっているので、他の札所寺院の本堂とは大きな違いがあります。岩壁とくっついて建てられてあることが言葉通りのものであると、はっきり理解できます。
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