話を聞く側のワタシが
延々と自分の話をしたのは
この時だけだ
大腸ガン手術後、抗がん剤治療を始めていた頃
張り詰めた糸がぷつりと切れた‥‥
ワタシという凧🪁は
空をさまよっていた
ちょうどこの頃だ
がん患者となり未来が全く見えず
不安に押し潰されていた
誰でもいい
誰かに
自分の胸のうちを聞いてもらいたいと切望した
向かったのはがん拠点病院
電車とバスを乗り継ぎ、片道2時間ほどかかった
そして、会いに行ったのは
”ピアサポーター”
同じがん患者の立場にある人
終始穏やかに微笑みながら
ピアサポーターは
ワタシの話を聞いてくれた
介護に追われ自分の健康を顧なかった後悔
娘・息子それぞれが来春受験を控えているのに
自分はどうなってしまうのか
なんで自分ばかりがこんな目に遭うのか
嗚咽しながら、鼻をかみながら‥‥
夢中で話し、気づけば日没近く🌅になっていた
とめどなく一方的に話をしただけなのに
ピアサポーターは
『また来てくださいね』と穏やかに微笑む
ただ、
自分も治療中なので、不在の時があるから
確認してください、と
どこのがんなのですか?
思わず尋ねると
ワタシとは違う体の部位を言われた
『私、がん10年生なんですよ
根治は無理だからがんと共存して10年目』
がんの専門誌に患者の立場から寄稿されたものも見せてくださった
なんて強い人なんだろう
自分の泣き言が小さく思えた
そして少し前を向けるようにもなった
その後親②の介護もはじまり
仕事も再開して
再びお訪ねすることもなく
月日は流れた
久しぶりに見た病院のホームページには
もうその方のお名前はなかった‥‥