外国人初の横綱が亡くなった。
力士は心臓が悪かったようだが、治療の過程で記憶障害を発症。
葬儀では未亡人にも遺児たちにも涙はなかった。
未亡人は7年一人で涙を流してきたから今は涙はないと話していた。
立場は違うがその心境は十分に理解できる。
あの日、あのとき
徘徊し歩き疲れて口を開けていびきをかいて寝ている母‥‥
突然怒り出し憎悪の眼差しでお前なんか消えてしまえと罵る母‥‥
脱力し惚けたような虚な顔で椅子に座る母‥‥
あの日、あの時
心のどこかで少しずつ母にお別れをしていたような気がしている。
主治医は家族の心情を汲みつつ緩和ケアを進めている。
病状説明で選ぶ言葉、その一つ一つは母を人としてを尊重していることを感じさせてくれる。
きっとこうした場面に
慣れている医師なのだろう。
今ワタシが過剰にエモーショナルにならずにいられるのは、
お別れへの長い助走と
医師からの真摯な言葉のおかげだと思っている。