​父、母

それぞれ葬儀を執り行いました。


喪主を務めたのは、

当然のことながら弟。

ですが、葬儀会社への発注、

連絡等の雑務はいつもの如く『やってくれない?お願いしていい?』と言われ、

私がしました。



そして、私は

実に10数年ぶりに

義妹に会ったのでした。





その人は地味なワンピースを着て、常に夫の傍にいた。


義妹である。


今いくつなんだろうか?


子どもがいないからか?もともと細身の身体はさらに細くなっていた。


葬儀担当者との打ち合わせ、

弟と顔を付き合わせながら

遺影写真を選んでいる。



久々に会ってから数時間は経つ。


だが、これまで親のことをしてきた私に

大病を患い今も難病と向き合うこの私に


その労苦を労い

体調を気遣う言葉を投げかけることはない。


弟はそういう女性を選んだのだと

笑みを浮かべながら親の写真アルバムをめくる姿をじっと見つめた。


 ​守られていた妻

認知症になった父を

『目の前から消して欲しい』と懇願した母。


私が父を引き受け、

願いは叶った。


だが、しばらくすると

弟に対し不眠を訴えていたと言う。


弟夫婦はそんな母に手を差し伸べることはなかった。


同居は無理だとしても、

行き来して母と過ごすようにするとか、

何かしら出来なかったのだろうか?



なぜそうしなかったのか、その理由を聞いて唖然とした。


『妻(義妹)を姑から守りたかったから』


しばらくは一人暮らしを楽しんでいた母も

やがて夫から守られなくなった自分の脆さに気付く。

不安を抱き

認知症になった。


一方、夫から守られていた妻である

義妹は葬儀の間も

夫から離れることはない。


葬儀独特の厳粛な雰囲気の中

義妹の周囲は異空間。

そこだけが切り取られ浮かび上がっているように私には見えた。