その後、ぼくをホストしてくれるマブさんと店長と三人でハウラー駅に向かう。
しかし、ここで問題が起きる。
チケットを買おうとしたのだが、ぼくだけ外国人だから寝台の席が取れないということに。
なんてことだ。
こんなところで外国人差別を受けるとは。
しかし、ピッコロ大魔王似の店長さんはぼくのために必死に駅員と交渉をする。
その姿はさすが長年商売をやってきただけあって、とても心強い。
彼が交渉している姿はかっこよかった。
何人もの駅員に話しかけてくれて、列車発車寸前まで交渉して、ようやくぼくも寝台に乗れることに。
店長さんの交渉が実った。
店長さんを詐欺だと疑ってしまったぼくが申し訳ない。
詐欺だったらあんなに必死にぼくのいい席を取るために交渉しないはずだ。
そんなこんなでぼくは店長に見送ってもらい、マブさんと共に寝台列車に乗り込んだ。
これが噂の深夜特急である。
本で読んだあれだ。
いよいよ自分も旅をしているだなっていう気持ちになる。
チケットを見ながらシートを探す。
狭い通路に群がる人を押しよけて、狭い席に4人で腰掛けた。
正面には6台の簡易ベットが上下左右に並んでいて、5人家族が座っていた。
そこの家族は、ぼくのことを興味津々に見つめている。
ほどなく、ぼくらは仲良くなった。
その家族の小学生くらいの可愛らしい女の子が、ぼくにキャラメルとグミをくれた。
こういう無邪気な優しさは一番嬉しい。
ぼくはお返しに日本の生茶パンダのストラップを彼女にあげた。
どこから来たのとか、これからどこいくのとか、あの男はいったい誰だ、とかそんな話をした。
外国人のぼくを心配してくれているらしい。
家族の中のある男性が、ぼくに家にこないかと誘ってくれた。
その家族の家はコルカタにあるらしい。
とても楽しそうだけど、ぼくはもうコルカタには戻らないので残念ながら断らせてもらった。
こういう列車の出会いは本当に素敵だ。
薄暗い列車の段差の大きい出口から、踏み外さないように注意して降車する。
出口付近にはこんな時間にも関わらずトュクトュクのドライバーが待ち構えている。
そのトュクトュクに8人でぎゅうぎゅうになりながら乗りこむ。
インドの片田舎を深夜に8人乗りのトュクトュクで駆けていく。
道は舗装されておらず、上下左右に車は揺さぶられる。
ぼくは、自分が旅をしているんだなということを、頬を切る深夜の冷たい風、トュクトュクの黄色い明かり、揺さぶられる体、となりの人の体温。そういうものから、ここでつくづく実感し、胸が高鳴った。
うっすらと遠くの空が赤みがかっている。
その空を目を細めて見惚れながら
20分ほどたったころだろうか。
目的地の家についた。
トュクトュクに乗ったころには空は暗かったのだが、ついた頃には空が明るくなり始め、周りの景色が見えてくる。
一面、てっぺんにだけ葉が生えている、例えるならばコントローラーのスティックのような形状の背の高い木と、畑、質素な茶色い壁の家以外何もない。
それを見て本当の田舎にぼくはついたんだなと実感した。
これからこの村でぼくはホームステイをするわけだ。
この村の皆がどんな生活をしているのか、それを見るのが非常に楽しみだ。
夜明けとともに家についたぼく。
果たしてこのマブさんという人物はどういう人物なのだろうか。
電車の中でチケットの代金や、食べ物の代金を払おうとすると、後で後でいいと言い、ぼくにお金を払わせてくれなかった。
これはよくある手段で、使った正確な金額をぼくには見せないためのもので、あとで多めに請求する手口である。
バリ島でも経験した。
また、電車の中でぼくに対して彼はこう言った。
「誰かに今どこに向かっているんだと聞かれたら、ガヤという所に一人で向かっていると言ってくれ。
ぼくら二人のことを知らない人に怪しまれるかもしれないからね。」
こんな誘拐犯のような言葉を言われた。
また、彼は聞いてもないのに何かにつけて理由をぼくに話す。
これは嘘をついている人の深層心理である。前に本で読んだし、色々な人を観察して肌で覚えた。
そう、これらのことから、マブさんはぼくに嘘をついていることが分かる。
しかし、あまり悪い人には見えない。
これはぼくの直感であるが。
ぼくは当惑していた。
ぼくの直感や店長が必死に交渉してくれたことからして、彼らは悪い人ではない。
しかし、マブさんは何か嘘をついている。
ぼくの心はまだ暗く、夜は明けていない。
次回に続く。