何しろ嫌いなのはネズミと毛虫である。特に裕福な家ではなかった私が育った家は父の会社の社宅であった。2軒長屋と言われる長細い戸建を半分に仕切った片側である。十分に古いその家の天井裏では毎晩ネズミたちが運動会をしていた。その姿を見ることはほとんどなかったけど、気持ちが悪くて仕方なかった。以来、ネズミはダメである。似ているリスも、その顔がネズミに似ているので皆さんが可愛いと言うほどには親近感がない。
それから毛虫である。昔は今よりもあちこちで毛虫を見かけたような気がする。桜の木にはアメリカシロヒトリだったか、うようよいたし、大きな木の下にいると上からポトッと落ちてくることもあった。それはもう恐怖でしかない。でも、成長するに従って毛虫よりも芋虫の方が更に苦手になった。あのモフモフ感は鳥肌ものである。
そんな私が、窓の外をリスが走り、庭に出ればふと鮮やかな芋虫くんに遭遇する日々を送っているのだから、人生何が起こるかわからないものだ。今朝、テラスの上に枯葉が落ちていると思ってよく見たら、枯葉色の中に目があるではないか。何て紛らわしい芋虫。間違ってモフモフを踏んだ場合の足裏の感触を想像してぞっとする。何でわざわざ緑がないテラスにやってきたのよとブツブツ言いながら、バケツの水でその子をテラスの外に流した。
食卓に座って窓の外を見るとリスが木に上っていく。うちを訪れる人達にとっては特別感のある嬉しい出来事のようだけど、私にとっては特別のことではないので、一人の時には現れなくてよろしいと内心思っている。安全、安心のために先日門のところにセンサーをつけた。動体を察知するとスマホに画像を送ってくれるらしい。Wi-Fiを使っているのでコンセントは要らないし、太陽光発電につなげてあるので電池も要らないのですごく便利。その第1号不審者はリスであった。珍しいものがあるぞと、顔がアップで送られてきた。いやいや、その顔は要りません。
時々、物陰ではゲジゲジがお亡くなりになっている。想像だけど、春に噴霧した1年もつ害虫撃退スプレーが効いている気がする。ゲジゲジさんは細い手足なのでそこから薬剤が入って行ってしまうんだろうか。繊細だ。だから家から外に出ておくれと内心願っている。無駄な殺生はしたくないもんね。
芋虫とかゲジゲジとかもインスタに上げたい気もするんだけど、以前木にへばりついている大きなカエルを載せたら何人かの友人からクレームが来た。カエルでもダメなんだから、芋虫なんてもってのほかだ。
だけどまぁ、特に用事がないかぎりうちの敷地から出ない毎日でも特に問題なく過ごせているのは、彼らが日常の中にいることも一因だと思える。彼らに多少の感謝はしないといけないかもしれない。