先日、仕事帰りに定食屋さんに寄ってみた。全国チェーンのお店だ。少し早めだったこともあり、お店は空いていた。このお店に来るのは久しぶりで、夕飯時は初めて。お魚の黒酢あんかけ定食を頼んだ。サラダ、お味噌汁、香の物がついて1000円。これを一人で作ろうとすると労力、費用共に敵わないなぁと思いながら食べていると、続々とお客さんが入ってきた。仕事帰りのお兄さん、おじさん、そして若いお姉さんだ。ちょっと寄って、自分の食べたいものを安く美味しく食べる。誰に文句を言われるわけでもない。これに慣れたらやめられないよねぇってつくづく思う。

もうすぐ田舎暮らしが始まるので、それまでに気になっていたお店のものを食べつくそうと頑張っている。いや、別に頑張るところでもないけど…。ガード下のラーメン屋さんとかは入るのに少し抵抗があったんだけど入ってみると、何ということもない、全然オッケーだ。女性の一人客が思いのほか多い。そしてみなさん、若い。これには隔世の感がある。私の友人には未だに一人で飲食店に入った経験がない人が少なからずいる。だから私が一人であちこちのお店に行った話をすると、彼女らは尊敬の眼差しを私に向ける。ちょっと前までは、その眼差しの中に1人で寂しくないのかなといった疑念が少し入っていたようにも思うんだけど、歳を重ねるに連れて、それはただ羨望に代わっていった気がする。亭主や姑さんがいると、そんなことはとてもじゃないけど無理だもんね。そこはまだまだ昭和を引きずっているのだ。

仕事が終わり、住まいも変わるので寂しい気持ちもあったんだけど、最近は来る新しい生活が楽しみで仕方ない。どこから見ても都会っ子ならぬ都会婆さんの私に周囲は大丈夫かいな?と口には出さないけど、思っているようだ。勢いはまだあると誤解している婆さんが住み慣れた都会を離れて見ず知らずの田舎で一人で暮らそうと言っているんだから、まぁそう思うのは仕方ない。だけどそんな思いなんぞはどこ吹く風で、やりたいことは山のようにあるのだ。とりあえず、日本画の画家になる。え、そんなキャリアがあるんですかと問われれば、そんなものはない。まぁ言ったもん勝ちである。私が画家だと言えば画家だ。そう自称、画家です。それから山のように持っている布地をなくすべく、様々な物を作ろうとも思う。そのためにミシンも新しくした。毛糸もあるのでそれの消費も必要だ。そうそう、インスタもやろう。庭の手入れをするついでに、毎日何かの植物や動物の写真を1枚、インスタにあげる。ユーチューブもするぞ。ユーチューブでは今までの仕事の経験を残そうと思っている。少しは頭を使わないとね。

そして、実は私の一番の得意なことは、ぼーっとすることだ。朝、テラスのブラインドを開けて、ジャズを聞きながら、コーヒー片手に東の山の稜線から昇る朝日を見るのは贅沢以外の何物でもない。

歳をとるにつれて、日中の活動時間はどんどん短くなってきているので、このくらいやることがあれば十分暮らすことはできるんじゃないかと思っている。そして健康を維持するようにする。先日、整体師の人と話していたら、私くらいの年齢になるとぶらさがることも出来ない人が多いとのことだった。えー!それってもしかすると私も?といきなり不安になった。雲梯ができないことはとっくに自覚していたけど…。ということで、ぶらさがる場所を今探している。

絵を描き、インスタやユーチューブを編集し、美味しいコーヒーを飲んで、ぶら下がる。天国以外の何物でもない。