1ポンドのバターを食べきってしまった。

製菓用に売られている銀紙に包まれた、バターは冷蔵庫の中でも異彩を放っていた。
だいたい、ポンドって単位で売られているものは他にはみあたらない。
一体なんグラムだ。

このバターは数奇な運命をたどった。

パイを作るためにやってきたはずのこのバターは、手違いにより放置されるはめになった。

彼は、有塩だったのだ。

レシピに忠実な作り手は新しく無塩バターを買い求めた。

長らく冷蔵庫で惰眠をむさぼっていたが、バターはバターであるがゆえ、パン好きの手からのがれる事はできなかった。
しかも、彼は有塩だったのだ!

最初は隠すように少しずつ削られていったが、あるときから大胆にけずられ、気がつくと、まるで消しゴムのように小さくなっていった。

半分、その半分とだれも最後の一人になりたくないのか、小さく、小さく残っていった。今や回りの銀紙のほうが幅をきかせている。

小さなさやえんどうのような実をつける小さな紫の花をご存知だろうか?
春になると空き地や道路の脇に出てくる弦植物。
名前を「すずめのえんどう」といいます。
どうやら、「すずめ」にはちいさいと言う意味があるんでしょう。



最後のバターを見て一言。
「すずめのバター」



つまり
「これじゃあ、すずめ涙ぐらいしか残ってないじゃん、このバター!」
の略語らしい。

意味はわかるけどもね。

※1ポンド≒450グラム