【リングと会話】⇔題名
僕は行く。
行くよ、僕は・・・
リングを見つめながら
あの頃を思い出す。
空を見上げるよりも
リングを見ることに徹した。
誰かと手を繋ぐことよりも
ロープを強く握る事を選んだ。
友達と笑いあうよりも
対戦相手を睨む事が多かった。
どんな事があっても
花道を歩き
ロープを潜って
コーナーに上っていた。
あの中だけが
普通に生きれる場所だった。
でも僕はリングを
一秒逃さず
愛し続けていた訳じゃない。
先輩に怒られればリングに
「お前のせいで怒られた」とマットを叩いた。
試合で怪我すればリングに
「なんで守ってくれなかった?」と叫んだ。
全部自分が悪いのを知っていながら
リングに怒っていた。
汗流れに気づかず
必死にリングを磨き
汗流れに気づかず
そのままリングの上で寝た。
蝉の叫び声に目が覚め
自分が寝てしまった場所にビックリして・・・
蝉の叫び声は続く
しばらくして僕は微笑んでリングにキスをした。
「いつもありがとう」
僕は行く。
行くよ、僕は・・・
試合に勝てば
大きくジャンプして
「おい、勝ったぜ」
ベルト巻いたときには
コーナーに上って
「おい、お前の体で一番高いとこ登ってるぜ」
試合に負ければ
倒れたまま、天井を見つめ
「適わないのかな?」
と涙をリングにこすり付けた。
愛したり
好きになったり
嫌いになったりだったけど
ずっと会話していたんだね。
君が僕に何も言わなかったのは
きっと僕の意思を君が解っていたからだろう?
僕は行く。
行くよ、僕は・・・
リングを見つめながら
あの頃を思い出していた。
夢の中で・・・。
聖地と呼ばれる場所・・・
それがリング。
リングこそが
戦う人にとっての聖地
君は僕より
長生きしろよ。
MARU