バスタオルで頭を拭きながらパンツ一枚で出てきた槙は、いつもよりずいぶん緊張しているように見えた。

 

ペットボトルの水を手渡すと、隣に座るよう促す沙紀。

 

水を一気飲みした後、槙は沙紀を強い目でじっと見つめた。

「あのね」

沙紀が切り出す。

「実は今、留学の話をもらってるの。」

下を向く沙紀は、槙の表情が読めない。

正確には、読みたくなかったから、下を向いた。

 

遠距離恋愛

雪村

別れる

 

連想ゲームのように出てくる3つのワード。

 

「私が論文で出したテーマをちょうどアメリカで研究してる人がいて、その手伝いをしてみないかって。」

 

「どのぐらいの期間なの?」

珍しくひやっとした槙の声。自然に雪村の声と重なり、おびえる。

「・・・1年ぐらいの予定。」

 

「なんで?」

 

沙紀はぎゅっと目を瞑る。

怖い。

体中が石になったように感じる。

 

「なぁ、こっちむけよ。」

 

槙が沙紀のあごに手を添えて、グイっと持ち上げる。

 

「目ぇあけて。」

 

そっと目を開けると・・・・そこにはいつも通り、優しい笑顔の槙がいた。

いつも自分にだけ向けられる、あの笑顔。

 

「なんでそんな顔すんの?行けばいいじゃん!」

そういってニカっと笑う槙。

「お前さぁ、俺言ったよね?夢に向かって突き進むのは大事だって。お前がやりたいことなら、ちゃんとやれ!俺はちゃんと待ってる!」

 

沙紀は体の力がふっと抜けたのを感じ、そのまま槙の体にもたれかかる。

 

「大好き・・・・槙さん。」

 

「もうそろそろ、その槙さんっていうのやめない?」

耳元でそういうと、槙はそのまま首筋にキスをした。