「えっと・・・・」

 

挙動が怪しい沙紀を壁際まで追い詰めた槙の目は、肉食動物そのものだった。

 

「なんで逃げるんだよ!?」

 

この状況で逃げない人はいるのかな・・・。

沙紀は逃げ場がないとわかり、素直に尋ねてみることにした。

 

「槙さん、、なんで怒ってるんですか?」

「俺は怒ってない!!!」

「・・・いや、怒ってますよね??」

 

槙は突然背中を向けたかと思うと、深呼吸を数回繰り返してから答えた。

「怒ってるというか・・・・・ショックだったんだ。」

冷静になったのかこちらを向いて、腕を組み続ける。

「俺あの日、運命の女に出会った!!って思ったんだよ。そしたら連絡先も残さずに出て行っちゃうとかさー。切ないんだけど!!」

 

すねる槙がすこしだけかわいくて笑ってしまう沙紀。

「あれから探したんだぜ?高校の時の知り合いとかに連絡したり。」

沙紀の胸がドクンと揺れた。

「そういえば雪村にも沙紀ちゃんの連絡先教えてーって電話したわ!断られたけど!!」

 

昔から槙はそうだった。

なぜこんなに、、空気が読めないんだろう・・・・・。

 

それでも槙は、失態をしても許されてしまう愛されキャラなんだと思う。

沙紀も怒るに怒れず、苦笑いをした。

 

「結局誰からもつながらなくてガックリしてたら、あのボーズの!彼と一緒にまさか俺の試合を見にきてるなんて!!そりゃ怒るだろってーーの!!!」

 

やっぱり怒ってる。

もう笑いしか込み上げてこない。

沙紀はついには声を出して大笑いしてしまう。

だが槙の恐ろしい表情を見て我に返った沙紀は、無駄に咳ばらいをした後とりあえず謝ることにした。

 

「お世話になったのに、勝手に帰っちゃったことは本当に悪いと思ってます。すいません。。でも私、あの日槙さんに会えてほんとによかったです。夢、諦めなかったのは槙さんのおかげです。」

 

そーだろー?と得意げに笑うかと思いきや、槙は当然だろと言わんばかりに言い放つ。

「何言ってんの?現状はお前の努力だろ?お前が努力したから、今がある!」

 

 

「・・・・わたし、槙さんのそういうところ、好きです。」

一瞬びっくりしたような顔をした後、沙紀はそういった。

 

すると突然、槙の顔がぐーーっと近くに寄る。

 

「ならさ、もう逃げないよね??連絡先、書いて。あと住所も。」

 

何が何だかわからないまま、槙は自分の腕にペンで連絡先などを書かせると「終わったら家行くからーー!!」と叫びながら会場に戻っていった。