「おーー!久しぶりだな!!元気だったか??」

 

当時から変わらぬ坊主頭の林が手を挙げる。

あれから少しだけまた背が伸びたようで、周りから「選手かな?」と小声で話しているのも聞こえてくる。

 

林と偶然会ったのは先月の終わり。

学校帰りに駅で電車を待っていると、おばあさんがホームの下に杖を落としてしまったとうろたえていた。

駅員さんに連絡しようとしたとき、ガラの悪そうな長身の男がひらりとホーム下に降りたのだ。

周りが驚く中、再びひらりとホームに舞い戻ると、笑顔でおばあさんにそれを渡したその男こそが林だった。

 

「林先輩??」

沙紀が思わず叫ぶと、それに気づいた林も驚き危うく本人がホーム下に落ちるところだった。

 

 

林は卒業後上京し、現在は一般企業に就職しているという。

こんな頭でこんな強面で、雇ってくれる会社があるんだなとか失礼なことを考えていると、田中は思いついたようにいった。

 

「そういえば沙紀ちゃん、バレーボールの試合見たくない?」

 

 

林が友人と行く予定だったプロリーグの試合に誘ってもらった沙紀は、わくわくしながら今日を待っていた。

今日の試合には、1年ほど前に出会った槙幸太郎が出る予定なのだ。

槙と出会わなければ、沙紀はもしかしたら夢をあきらめて地元に帰っていたかもしれない。

自分に大きな力と希望をくれた槙の活躍を、生で見られるのが楽しみだった。

 

遠足か?と思うぐらい食べ物や飲み物を買いあさった林とともに、指定された席に着く。

すでにほぼ満席だ。

林がパンフレットを見ながらフランクフルトを食べ終わったのと同時に、会場が暗くなる。

 

音楽とともにチーム名がスクリーンに映し出される。

小気味よいBGMとともに、続々と選手たちが出てきた。

 

「槙さんだ!!!」

林と沙紀は顔を見合わせて、喜びを隠しきれないといったようにハイタッチをした。

 

 

試合も終盤、あと1点で勝利だ。

槙はスターティングからほぼ出ずっぱりで、疲労はかなりものだろう。

だが、そんなものをみじんも感じさせない動きと表情でほかのメンバーを鼓舞する槙の姿は、高校生の時と変わらない。

 

会場から手拍子を要求し自らを奮い立たせると、その後のサーブで相手を崩し最後はバックアタックで試合を決めた。

 

会場中が槙に歓声を送っていた。

槙もそれにこたえるようにコート内を走り回りガッツポーズ。

ほんとにすごい人なんだ、沙紀はただ感動するばかりだった。