「はぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
首と肩が石のように重い。
首をぐるりと回したあと背もたれを使って背伸びをし、質素で古典的な時計を見ると時刻はすでに夜中の12時を回っていた。
「はらへったぁ・・・・」
隣でパソコンの画面とにらめっこしていた秋山保一が机の上にへたり込む。
現在着手している論文テーマが外国の論文に類似していると教授に言われた秋山は、ここまで進めてきた自分の論文を利用して何とか修正できないだろうかと模索していたのだ。
「どうにかなりそう?」
沙紀が心配そうにのぞき込むと、秋山は白目をむいて進捗状況をアピールしてくる。
「俺のことはおいて行け・・・。達者でな・・・・・」
ふざけても事態が改善しないことはわかっていても、現実逃避をしたい時があるのは沙紀にもよくわかる。
秋山の欠点は効率性に欠けるとこだよね、そう思いながら沙紀は席を立った。
「私そろそろ帰るね~。」
薄情者だのなんだのと騒がしい秋山を置いて校舎の外に出ると、、突然強い風に驚き目をつぶる。
そっと開けた瞬間に広がっていたのは、街灯に照らされて散る無数の桜の花びらだった。
まるで雪のようで、沙紀はふと高校時代を思い出す。
以前のように胸が苦しくなることはなくなったが、久しぶりに思い出してしまった記憶を回想しながら沙紀はしばらくそこに佇んでいた。
ピロン
「明日、何時集合にする?」
取り出したスマホに表示されている文字をみて、沙紀はあっと声を出した。
明日だ。
明日だった!
沙紀は返信を忘れて、桜吹雪の中を走り出していた。