「で?なんで別れたの?」
槙の前にはビールの缶がすでに3本転がっており、すでに焼酎の入ったグラスをカラカラとまわしている。
沙紀はようやく2本目のビールを一口飲むと、隣にいる槙の肩に頭をごつんと打ち付けた。
「がんばったですよ、お互い。でも休みがすれ違って会えなかったり、ようやく会えても話が合わなくなったりで・・・」
「確かに遠距離になるとお互い環境変わるから、共通の話題減るよなー」
うんうんと頷く槙にグイっと詰め寄る沙紀は続ける。
「そうなんです!!!で・・・今年の春、向こうに帰ったときに言われたんです。浮気したって・・・・。」
最後まで言い終わる前に沙紀は槙のトレーナーにつかみかかりながら泣き始めた。
「浮気しても許してやればいいじゃん?」
「許すかどうかなんて、私には選択権なかった・・・・。そのあと別れようって。」
泣きじゃくる沙紀の頭をポンポンしながらしばらく何かを考えていた槙は、突然立ち上がった。
「でもさー!よかったんじゃない!?」
仁王立ちのまま笑顔でそう言い放つ槙をぽかんと見上げる沙紀。
「だってさー、明らかにお前ら別の方向向いてんじゃん!この後お前と雪村が交わるところって、あんの?」
そうだ。
槙は正しい。
雪村は向こうで就職を考えている。
そして私は・・・・こっちで研究室に入ると、決めて、いる。
「雪村が浮気したことってきっかけに過ぎないだろ?お前らは、進路決めた時点でもう終わってんだって!」
そう自信満々にいう槙を見て、沙紀は吹き出した。
「ちょ、お前!俺が真剣にアドバイスしてやってんのに!!」
槙はソファで笑い転げる沙紀につかみかかり、一塊になりながら床にごろりと転がった。
いたた、と言いながら涙を出してさんざん笑った後、すぐ近くにあった槙の目をみて「ありがと」といった。
槙の目の色が、少し変わったと思ったその時にはすでに、二人の唇は重なっていた。
槙からは想像もできないぐらい優しく丁寧なキスは次第に深くなっていく。
息ができずに顔をそむけて逃げる沙紀を、執拗に追い詰め、むさぼる槙。
「なんで?」
キスの合間になんとか発した言葉を、槙は簡単に覆す。
「俺に抱かれて忘れちゃえよ!」
沙紀はもう一度小さく吹き出して、今度は自ら唇を重ねた。