受験勉強なんて、二度としたくない。。

そう思いながら璃子は机の前に座っていた。

 

世間はお正月。

雪がちらつく中、外からは羽子板をやる子供の元気な声が聞こえてくる。

 

あーあ、透に会いたいな・・・。

 

そう思っていると外から何やら声がする。

耳を澄ましていると・・・・・ん??

 

急いで窓を開けて外を見ると、透が璃子の名前を呼びながら手を振っていた。

 

「透??なんで??」

 

「初詣、いこうぜ!」

 

 

急いで支度をしてリビングに下りていくと、母親の作ったおせちを透がつまんでいた。

ちゃっかりこたつに入って暖を取っている。

「どうせ勉強全然やってないみたいだし、気分転換にどこでもつれてってやってよ!」

昔なじみの透のことを気に入っている母親が、また好き勝手なことを言っている。

「ちゃんとやってるよ!」

喧嘩を始める璃子と母親をなだめ、おじゃましましたと璃子の手を取り外へ出る透。

 

初詣と言っても、近くの神社にお参りに行くだけだ。

それでも璃子は、うれしい。

大好きな透と一緒に、住み慣れた町のなじみのある道を歩く。

それだけで璃子は幸せだった。

 

「そういえば透は受験いつだっけ?」

「俺?来月のはじめ!」

「私より早く終わっちゃうのかぁ。」

透は県内の専門学校で、理学療法士になるための勉強をしたいと言っていた。

璃子は地元の大学の看護学部を受験する。

うまくいったら同じ病院で働けるかもね、などと話しているとあっという間に神社に到着した。

 

賽銭箱に小銭を投げ入れ、2人で同時に鈴を鳴らし手を合わせる。

 

透の隣で、こんな幸せが毎日続きますように。

あ、大学も合格しますように!

 

小さなお願いを何個も盛り込んだので、ずいぶんと時間がかかってしまった。

 

呆れたように笑う透に、璃子は問いかける。

 

「透は何をお願いしたの?」

「ん?内緒~」

「教えてよー」

じゃれあっていると、透がふと真顔になった。

 

「沙紀ちゃん、ほんとに東京いくんだ?」

璃子はそう聞いている。

どうしてもかなえたい夢があるといっていた。

「合格したら、雪村くんと離れ離れになっちゃうよね。」

璃子にはわからなかった。

好きな人と一緒にいられなくなるのに、なぜ遠くの大学に行こうと思うんだろう。

沙紀と雪村はあまりその話題に触れたがらないし、二人でいるときも話し合っていないようだ。

 

「雪村はさ、沙紀ちゃんのことほんとに好きだから何も言えないんだと思うよ。」

 

遠くに見える真っ白に変わった山を二人でぼんやりながめていると、また雪が降り始めた。

 

お互いに理解するのはとても難しい。

でも、言葉に出さないと伝わるものも伝わらないんじゃないかと思う。

 

「私は、透とずっと一緒にいたい。」

 

真剣な表情でつぶやいた璃子に、透は振り返り「俺も」と笑った。