受験が終わり、沙紀と雪村はそれぞれが希望する大学に合格した。

 

沙紀は東京、雪村は地元に残るという事実がまだ受け止め切れていない二人は、合格発表の翌日に近くの公園で会う約束をしていた。

 

3月にしては暖かい晴れた日だったが、時折吹く風はまだ冷たい。

公園の花壇に咲いた名前も知らない花は風に揺られて寒そうだ。

 

沈黙が続く中、珍しく口火を切ったのは雪村の方だった。

 

「いつ、行くの?」

 

「来週の土曜日に引っ越すことになった。」

 

「そっか。・・・・また住所教えて。」

 

「うん。」

 

再び沈黙が戻ってくる。

 

「ごめ・・・・」

「謝るのはなしね。」

 

驚いて雪村を見た沙紀の胸がぎゅっと痛む。

 

雪村の顔には、諦めと怒りとやさしさが詰まっていた。

 

「こうなることは、だいぶ前からわかってた。沙紀の気持ちの強さも、ちゃんと理解した。でも・・・・」

下を向いた雪村の声が震える。

「会えないのは、さみしい。」

 

沙紀はブランコから立ち上がって、雪村の頭をぎゅっと胸に抱き締める。

いつもは見下ろされてばかりなのに、今日はずいぶんと小さく見える雪村の体。

そして雪村の髪の毛からは、いつもの雪村の匂いがした。

 

「1か月に1回は帰ってくるから。私はずっと・・・雪村くんが好きだよ。」

 

沙紀の胸の中から雪村の嗚咽が漏れてきたが、沙紀にはどうすることもできない。

小さな子供にそうするように、雪村の頭をそっと撫でてやる。

 

「わがまま聞いてくれて、ありがとう。」