夜の繁華街を、不安な足取りで歩く沙紀。
今にも泣き出しそうな目は、いまいち視線が定まっていない。
「わたし、なにしてんだろ・・・」
見上げた冬の空は、地元で毎年見ていたそれとはずいぶん異なったものだった。
東京の空は、すべてを隠すかのような濁りを含んでいる。
上を向いていた沙紀に誰かがぶつかる。
「すいませ・・・」
謝る前に数人の男に取り囲まれた沙紀。
高校生の頃取り囲まれていた大きな部員たちよりもはるかに小さいのに、彼らからはなにか恐ろしいものを感じてすこし体を震わす。
「あれー?一人で泣いてるの?」
「千鳥足でご機嫌だねー!俺たちともう少し飲まない??」
結構です、と立ち去ろうとしたが、先ほどやけになって飲んだお酒が回っていてうまく歩けない。
ふらつく沙紀の腕を強引につかみ、男たちは笑いながら細い路地へと連れ込もうとした。
「やめてください!!」
男の手を振りほどこうとした沙紀は勢い余って水たまりに落ちてしまった。
それを見てニヤニヤと笑う男たち。
わたし、ほんとに、何をやっているんだろう・・・・。
もうでもいいや、諦めがにじんだその時、頭の上から大きな声がした。
「沙紀ちゃん?なにしてんのー!?」
見上げると背の高い男がのぞき込んでいた。
槙・・・さん??
もともと背は高かったが、プロリーグで体を鍛えているのかずいぶんと昔よりも体幹ががっしりしている。
それにこの大きな声だ。
男たちは恐れをなしたのか、そそくさと消えていった。
「なにーー??真冬に水浴び??俺より屈強!!!」
ニカっと笑う槙をみて、一気に張りつめていた緊張が解けた沙紀はそのまま泣き出してしまった。
街中で水たまりに座り込んだ女が号泣し、そのそばでたたずんでいる大男。
この画はまずい。
さすがの槙もこれには動揺したようだ。
「俺の家近いから、とりあえず服乾かしたら?」
そういうと、わんわんと泣き続ける沙紀の手を引っ張り歩き出した。