最後の公式試合は県大会まで進んだ。
受験勉強と部活の両立は、マネージャーの沙紀ですら身に応えるというのにみんなよく頑張っていたと思う。
何かに熱くなることなんてないと思っていた雪村ですら、ブロックを決めれば仲間とハイタッチをし、最後に負けた時は涙を隠さなかった。
うちの学校にしては優秀な成績を残した今年のバレー部も、世代交代だ。
3年生はみな、受験勉強に没頭した。
進路相談は今日で3度目、これが最後だ。
悩まなかったわけではない。
何度も雪村に話した。
でも、雪村は「行かないで」とも「頑張れ」とも言わずに、ただ静かに成り行きを見守っていた。
璃子と透はいつも気にかけてくれているが、肝心の雪村が何も言わないので見守るしかしょうがない。
お正月、雪村のご両親が旅行で不在ということで、沙紀は雪村の家で受験勉強という名目のもとくつろいでいた。
こたつの上にももちろん二人の勉強道具が散乱しているが、異なるタイトルの赤本だけが存在感を醸し出している。
ベッドの中でそれを見つめながら、雪村の胸にすり寄る沙紀。
「寒い?」
気遣って布団を肩までかけてくれる雪村が、いとおしく思いながらも心苦しくなる。
「・・・ごめん」
「何が?」
「・・・・・」
押し黙る沙紀の頭をそっとなでる雪村。
「東京なんて、すぐだよ。」
わかってる。
そう思っていても、本当はすごく遠い。
そしてそれはきっと、雪村もわかっている事実。
自分があきらめればそれで丸く収まる、それなのに夢を諦められない自分を、雪村はどう思っているのだろう。
普段自分の気持ちを口にしないだけに、沙紀は不安で仕方がなかった。
「会いに行くから。」
春はもう、すぐそこだった。