無言の雪村を無理やり連れてきたのは、沙紀の家だった。

沙紀は家の鍵を開けて雪村を自分の部屋に連れていく。
綺麗に片付けられた部屋の奥にはベッドがあり、あたたかなベッドカバーが敷かれていた。
この日のために、沙紀がお店で何時間もかけて選んできたものだった。

部屋の入口に立ち尽くす雪村をそのままに、沙紀はカーテンを引くとおもむろに制服を脱ぎ始めた。
雪村は戸惑いながらも沙紀の手を止めた。
「何してんだよ。」
「今日は約束の日だもん!」
雪村の手を振り払い、シャツのボタンをはずす沙紀の目からは涙があふれていた。
「私をわかってもらう方法はこれしかないもん!」
レースの下着があらわになり、雪村は視線を逸らす。
「ちゃんと見てよ。私は・・・私は雪村くんしか見てないよ。ずっと、前から・・・」

下着姿で雪村の胸元にしがみつく沙紀の手が、寒さと緊張で震えていることに気が付く雪村。

僕は、なんてバカなんだろう・・・。
彼女が今まで僕に嘘をついたことがあっただろうか?
僕が言葉足らずで伝えられないときにも必ず、彼女なちゃんと自分の気持ちをぶつけてくれていた。
どうして信じられないんだろう。


雪村はそっと沙紀の体を包む。
手が冷たかったのだろう、びくっとして沙紀の背中に鳥肌が立つ。
雪村は、小さくゴメンというと沙紀の肩に唇をつけた。

温かい吐息が沙紀の肩にかかり、沙紀の口から言葉にならない声が出る。

背中を包んでいた雪村の手が徐々に温かくなるにつれ動きを増す。
ホックが外され沙紀の胸があらわになる。
唇は首を伝って頬に、瞼にいき涙をそっと吸い取ると、沙紀の唇に達した。

雪村は口にできない思いをすべて託して深く口づけをすると、沙紀をベッドに寝かせた。

もどかしそうに服を脱ぐ雪村を見上げるが、暗くて表情ははっきり見えず不安になる沙紀。
初めての体験に身も心もすくんでいたが、雪村の肌を直接感じることで徐々に温かくほぐれていく。

眼鏡をはずしベッドサイドに置くしぐさ、何度も想像していたが想像を絶する冷たさに沙紀は見とれていた。
雪村の顔が近づき、もう一度深い口づけ。
今までも抱き締められた時に何度か感じていた雪村の高まりが今日は熱くおなかに感じる。


もっと。
もっと欲しい。
もっと深く知りたい。


雪村の手は滞ることなく沙紀の体中をめぐり、沙紀のすべてを理解しようとする。

言葉では伝えきれない雪村の苦しみを表しているようだった。

好き。

その直後、沙紀は痛みに慄いた。

「だいじょうぶ?」

雪村の声が、まるで体の中から聞こえるように感じる。

「雪村くんが、欲しい。」

心なしか余裕のなくなった様子の雪村のリズムが、徐々に早くなる。

沙紀は温かい雪村を全身で感じていた。


この時間が永遠に続いてほしい、そう思いながら雪村の肩にしがみついていた。