すこしだけ空が白んできた交差点。
冷たい手を息で温めながら、青になるのを待つ沙紀がいた。
冬の朝練はつらい・・・。なんでこんなに寒いんだろう。

夏の間は待ち遠しくてたまらなかった冬だが、いざ来てしまうとやっぱり春が恋しくなる。
私、ずるいなとマフラーの中で少し笑う沙紀。
こんな寒い日が続いても朝が楽しいのは、間違いなく雪村によるところだと自身も気が付いている。

学校の近くでなければ、雪村は手をつないでくれるようになった。時々物陰でキスをすることもある。
とても幸せだ。
中学のころはバレーボールばかりで、高校生活がこんなに楽しくなることなど予想もしていなかった。
怪我をして、いいこともあったな。
転んでもただでは起きないって、このこと??
使い方合ってるっけ???
ひねる頭にポンッと何かが当たった。
振り返ると雪村の手袋だった。


「おはよ」


朝が苦手という雪村の寝ぼけた顔が好きだ。
時々寝ぐせが付いている、柔らかそうな髪の毛も。
寒さですぐに曇る眼鏡をめんどくさそうに外すそのしぐさも。
全部、好きだ。

「おい!!そこ!!朝っぱらからいちゃつくんじゃねーよ!!」
後ろから聞こえてきたのは二年生の林の声だ。坊主頭が寒いからと、寒くなってからはずっとニット帽をかぶっている。そんなに寒いなら髪の毛を伸ばせばいいんじゃないかと最近の1年の間でも話題だ。
「別にいちゃついてません。」
「おはようございます!」


もうすぐやってくる冬休みの話をしているうちに、いつの間にか体育館に到着した。中からはもうボールの音がしていて、それに感化された林は勢いよく体育館に乗り込んでいった。
「風邪ひいたら週末のアレ、なしだから。」
ブルッと体をふるった私の真っ赤な鼻を指先でつついた雪村は、ゆっくりと部室に消えていった。

「ちょっとぉぉぉ」
女子更衣室からは璃子が顔を出しながらもだえている。
「何??あんな甘い顔であんなことするの??雪村くんって!!」
雪村のイメージからは想像がつかないだろうというのは沙紀も同感だ。彼女でなければあんな表情も見られないんだと思うと、なんとなくうれしくなった。
「ギャップ萌え~~~」
なぜか満足そうな璃子だったが、急にまじめな顔になり沙紀に詰め寄る。
「で。週末のアレってなに??」
「えっと・・・」


先日雑誌で「冬のイルミネーション」特集をみつけた沙紀。もちろん雪村が寒い場所が嫌いなことも知っているし人混みが苦手なのも知っている。それでも沙紀は、雪村に一緒に行きたいとごねたのだ。
はじめは拒否していた雪村も、何時間も同じ話をされ、最後には泣き落としにかかる沙紀に根負けして、今週末に約束を取り付けることができたのだ。
「いーなーー。私は透に一瞬で却下された・・・。めんどくさいって。」
しょんぼりする璃子に同情しながら、沙紀はどんな服を着ていこうか今からわくわくしているのだった。