11月末というだけあって、午後になったというのに風は強く冷たい。
沙紀はしっかりと分厚いコートを着込み、雪村の家に向かっていた。
明日からの期末テストで不安が残る物理の勉強を教えてもらう約束をしているのだ。
雪村の家族が不在なのはあらかじめ確認済み、今日こそ麗から教えてもらったあの手法を!!と意気込む姿は、さしずめ戦に向かう武士といったところか。
歩いて10分程度で雪村の家が見えてきた。
すでに何回かお邪魔していて雪村の母にも「彼女」認定されているにもかかわらず、やはりどこか頼りない二人の関係をどうにかすべく歩みを進める沙紀の頭の中には、すでに物理のことなどこれっぽっちもないのだった。
ピンポーン
インターホンの向こうから雪村の返事が聞こえ、すぐにドアが開く。
「いらっしゃい。」
相変わらず無表情の雪村だったが、たまにしか見られない雪村の私服に沙紀の胸は高鳴る。
いつも通り2階の雪村の部屋に通されて、早々とこたつの上に勉強道具を出し始める雪村。
「部屋あったかいね。ちょ、ちょっと暑いかなぁ~」
おもむろに分厚いコートを脱いで沙紀が雪村の向かいに座る。
しまった!!近くに座れって言われてたんだった。。。
もう一度座りなおそうかと考えていると雪村の視線を感じた。
「・・・だいじょうぶ?」
「だいじょうぶです・・・・」
雪村は沙紀の服装には目もくれない。
意気込んて来た割に出鼻をくじかれた沙紀は、おとなしく勉強を始めることにした。
「・・・・が・・・・のとき、その条件を満たすのは・・・・・」
いつものように明瞭な解説ですらすらと問題を解いていく雪村の声を聞きながら、沙紀はもう一度仕掛けるタイミングを計っていた。
「あのさ、」沙紀がびっくりして顔を上げると、訝し気にこちらを見つめる雪村の顔があった。
「集中できないんなら、今日は帰る?」
「違うの!ごめん、疲れたのかな~?ちょっと休憩してもいいかな。」
慌ててごまかす沙紀。
ここであきらめてはならない!
麗と璃子がこの日のために選んでくれた服ーーピッタリとして胸元の開いたニットと膝がしっかり見えるミニスカートーーを台無しにすることなんてできない!!この日のために、わざわざ谷間矯正ブラまで買ったのだ。
沙紀はもう一度仕切り直そうと考えた。
ふと視線を逸らすと、雪村の後ろの本棚に中学校の卒業アルバムが立ててあるのが見える。
「雪村くん、これ見てもいい?」
何気なく本棚に近づいて手を伸ばすと突然雪村がそれを拒んだ。
珍しく雪村の冷静な顔が崩れて、少し赤みを帯びている。
ちょっとしたいたずら心が芽生えた沙紀は、無理やり奪い取ろうと身を乗り出してみる。
「ダメだって!」
「いいでしょ~」
足がもつれて、沙紀は雪村の上に乗っかる形で転んでしまった。
顔と顔が近づく。
今しかない!!
沙紀は雪村を見つめた。