透とのいきさつで盛り上がった沙紀と璃子がカラオケ店についたのは予定から30分もたってからであった。
1年生の分際で遅刻をするなんて、、とおびえながら覗いてみると、すでに部屋の中は大盛り上がりだった。
沙紀たちに気づいた麗が席をすすめてくれるが、何を言っているかは先輩たちの声にかき消されて全く分からない。
沙紀がのどの渇きを覚えドリンクコーナーに行くと、そこには透と雪村がいた。
当たり前のように目をそらす雪村に沙紀の胸がズキンと痛む。
「あ、おれ、トイレ!」と透はいそいそと姿を消してしまう。

遠くでは誰かのお世辞にも上手とは言えない歌が響く中、静寂をより苦痛に感じた沙紀が重い口を開いた。
「今日、残念だったね。あと少しだったのに・・・」
「・・・そうだね。」
「雪村くんのブロックはいつもすごくきれいだよね。」

相変わらず雪村から背を向けられ、また涙が出てきそうになった沙紀はドリンクを取ることも忘れ部屋に戻ろうとした。
するとその道をふさぐように雪村が立ちはだかりめんどくさそうに笑う。
「無理して僕のこと褒めるのやめてくれる?男を手玉に取るのが君の趣味なの?」
「・・・・っ」
続ける言葉すら出てこないほどこぼれだす涙に、雪村は一瞬ひるんだように見えた。
これじゃあ今までと一緒だ。
自分の気持ちを、ちゃんと伝えよう。


沙紀は雪村の服をぐっとつかんだ。涙でぐしゃぐしゃの顔で雪村をじっと見る。
「私は、ずっと、雪村くんが、好き」
雪村の顔から表情が消える。だが吐き捨てるように言った。
「そんなの・・・南先輩にもいったんじゃないの?」

沙紀の手が雪村のシャツからそっと離れる。
しまったと思ったが、もう遅かった。
沙紀の姿は、すでに自動ドアの向こう側に消えて行ってしまった。

トイレから一部始終を見ていた透が慌てて出てくる。
「冬真!おまえっ!!!バカか!!!」
「!?」
いつもはおどけてみんなを笑わす透が、雪村にこんな言い方をしたのは初めてだったのだろう。雪村はびっくりした顔をしていたが透は気にせず続ける。
「沙紀はお前のことずっと見てたんだよ!お前が南先輩に嫉妬したり一人でウジウジ考え込んでる間もな!」
ウジウジって・・・そんなこと今まで言われたことないんだけど!
「お前さぁ、こんな意地悪そうで暗そうなノッポの男子に、好きって直接飛び込んでくるのってだいぶ勇気要るぞ?早く追いかけろ!追いかけないと、俺今日からお前の友達やめるから!!!!」
透の言っていることは乱暴だし理路整然としてない。
何より友達やめるとか言われたらって自分の行動を変えたりしない。


でも。


僕は・・・・柚井沙紀が好きだ。