夏休みに入って、地区大会まであと1週間となった部員たちは最後の追い込みを見せていた。
マネージャーである沙紀と璃子も例外ではない。この大会が終わったら3年生は引退、2年生のマネージャーがいないバレー部は必然的に1年の二人にマネージャーのすべての仕事が受け渡される。
3年の美人マネージャーである麗から毎日少しずつ仕事を教えてもらっているが、あと1週間で覚えきる自信は全くなかったのだ。
強い日差しに溶けそうになりながらも、休憩時間にドリンクを作る沙紀の手元が日陰になる。
ふと上を見上げると南が汗だくで立っていた。
「お疲れ!手伝うよ!」
沙紀の数倍は疲れているはずの南だが、その姿はどこか楽しそうだ。
「いやいやいやいやいや、南先輩は休んでください!タオル持ってきます!!」
ドリンクが入ったボトルを抱えて体育館に戻ろうとした沙紀の手から、何本かボトルを抜き取り一緒に歩き出す南。
「先輩、なんか楽しそうですね。大会楽しみですか??」
「ぜーーんぜん。むしろビビりまくってる!でもこのメンバーでできる最後の試合だからさ。」
スタメンのセッターなんてコートで最も動き回らなければならないし、何より「完璧な仕事ができて当然」のポジションだ、精神的にもかなりつらいだろう。南はどんな状況でもみんなを奮い立たせ、支えていく強さを持っている。
「沙紀ちゃんはどう?あれから・・・雪村と進展あった?」
「え?」
持っているボトルをすべて落としてしまい、慌てて拾いにいく沙紀。
どうして知ってるの??
「俺、実は沙紀ちゃんと入学式で会ってるんだよね。その時はかわいい子だなーって思ったぐらいだったんだけど、バレー部の仮入部に来てくれて。それからずっと見てた。だから、知ってる。」
強い目で遠くを見つめる南が沙紀に目を移す。
「それでも、俺に可能性があるなら。俺のことも知ってほしい。」
そういうと真剣だった顔をくしゃっと崩して、ドリンクを配りに行ってしまった。
南の後姿を追っていると、後ろからひんやりとした声がした。
「付き合わないの?南先輩、いい人じゃん。」
雪村だった。