「そんなんじゃないって・・・やっぱりそういうんじゃないってことだよねぇ。。。」
ボールに空気を入れながらがっくりと肩を落とす沙紀をみて、璃子はわざと明るくふるまう。
「照れてたのかもよ?だって雪村くんあんな感じだし!」
「そうだといいんだけど。折れそう。。」
現実逃避のためにシュポシュポしすぎたのか、空気を入れすぎてしまったボールは林のもとへ転がっていく。
「どしたーー??1年生ってなんかあったー?」
いつもはムードメーカーで元気いっぱいの林も、こういう時は空気を読んでほしいと二人は思う。
すると近くにいた先輩たちも話に加わる。
「え?1年みんな元気ないの?赤点??」
「違うって!雪村と沙紀ちゃんね~」
「あれ??もしかして二人、なんかあった??」
「おーーー、いつも仲いいもんな!」
「誰に対しても塩対応の雪村が、沙紀ちゃんにだけ多弁なのを俺は知っている!!」
なんだかすごく嫌な空気だ。
雪村の耳に入れたくないとおもったが、すぐ後ろにボールを追いかけてきた雪村がいることに気が付いてしまう。
雪村は無言で、無表情だった。
林は気が付かずにたきつける。
「お似合いだぜ!!お前ら」
そして周りもそれに乗っかり楽しんでいるようだ。
すると雪村が静かに口を開く。
「・・・柚木のことそんな風に見たこと、一度もないですから。やめてください。」
静まり返る体育館。
重い空気になってしまったことにようやく気付いたのか、先輩たちは「腹減ったな~」などと話をそらしながらぱらぱらと散っていった。
「や、やだ。変なこと言わせてごめんね、雪村くん。」
雪村は向こうを向いたままだ。それに追い打ちをかけられ、沙紀の声が小さく震える。目に大きな涙をためて走って行ってしまう沙紀を見送りながら、璃子は雪村の小さな声を聞いた気がした。