「びっくりしたよ~。いきなり雪村に話しかけるんだもん!」
「でも雪村くんってミステリアスでちょっといいよね~」
アイスクリーム店では沙紀の奇行で持ち切りだ。
一番驚いているのは沙紀本人なのだが、なんせ誰にも理解されないと思っていた「soft wing」のファンがすぐ近くにいたのだ。2年前に路上ライブ中に出会ってから、沙紀は追っかけ同然にサポートしてきた本物のファンだった。
「雪村くん、ライブとかにもいってるのかな~?いつもヘッドフォンしてるのは、soft wingの曲聞いてたのかな~~」などと空想している沙紀を横目に、すでに話題は好きな男子の話に移ってきている。
「ねー、璃子は誰が好きなの?やっぱり透くん??」
「ちょ。そんなんじゃないよ~!!」
桃にからかわれて璃子はリンゴのように真っ赤だ。
「透はただの幼馴染で・・・好きとかそんなんじゃ、、」と言いながらもまんざらではない様子の璃子だったが、負けじと反撃に出る。
「じゃあ桃は誰が好きなのよーー!」
「私は断然3年の北原先輩♪バスケめちゃくちゃ上手だしあの王子様みたいな顔・・・・。ライバルは多いけど、私頑張る!!!」
小さい身体のなかにものすごいパワーを秘めているようだ。
「二人とも青春だねぇ~~」と隣で達観しているのは咲良だ。
「あたしはもっぱらBL専門だから・・・。むしろ北原先輩と透くんがイチャコラしてるのが見たい!」
「・・・・・・」
「・・・・沙紀は??」
空想中に突然話を振られた沙紀。
好きな人????
沙紀の頭に浮かんだ顔は窓際で音楽を聴いている雪村の横顔だったが、本人が自覚していないのだからしょうがない。
「私は・・・soft wingの森川さん!」
3人は肩をすくめながら無言でアイスを口に入れた。