" 夜は短し歩けよ乙女 "
監督 湯浅政明
原作 森見登美彦
私は木屋町の西洋料理店で開かれた結婚祝いにいて
「お酒のみたい」と熱烈に思ったのです
しかし、その夜はまわりが先輩ばかりでしたから
お酒を好きなように飲むというわけにはいきませんでした
私は単身で魅惑の大人世界へ乗り込んでみたいと思いました
ようするに
先輩方へ遠慮することなく
無手勝流にお酒が飲みたかったのです
◯
彼女はクラブの後輩であり
私はいわば一目惚れしたが
未だに親しく言葉を交わすことができずにいた
◯
二次会は失礼することにしました
四条木屋町界隈は
夜遊びに耽る善男善女がひっきりなしに往来していました
この界隈にこそ「お酒」が
めくるめく大人世界との出会いが
私を待ち受けているに違いないのです
***
私は知人に教えられた
木屋町にある「月面歩行」というバーを選びました
その店はありとあらゆるカクテルが200円で飲めるのです
かくして私は
無手勝流にお酒を嗜んでいたのですが
カウンターの隅にいた見知らぬ中年の殿方に
ふいに声をかけられました
「なにか奢ってあげよう」
その人は東堂さんといいました
東堂さんは秘密のお酒の話をしてくれました
そのお酒は「偽電気ブラン」というのです
◯
私が彼女を探していると唐突に
得体の知れぬ暴漢に襲われて路地へ引きずりこまれ
あろうことかズボンと下着を盗まれたのである
◯
東堂さんは腕を私の身体に回して抱くようにしました
そうしているうちに東堂さんの手が私の胸の界隈へ
滑り込んだことに気がつきました
私はくすぐったくて
しまいには東堂さんを押しのけざるを得ませんでした
ふいに「コラ東堂」と後ろから女性の声がしました
振り返ってみると
それは背が高く 凛々しい眉の女性でした
横には色褪せは浴衣を来た男性が悠然と立っていました
女性は羽貫さん 男性は樋口さんと仰る方でした
慌てて立ち上がった東堂さんの
風呂敷包みがほどけて中身が床にぶちまけられました
それはたくさんの古い絵でした
男女が知恵の輪のようにからまり合っており
その局部には
何やら怪獣のようなものがわだかまっているのです
東堂さんは慌てて私の手からその絵をもぎりとりました
「春画だよ」
東堂さんはぶっきらぼうに言いました
「今日はこれを売り飛ばしに来たんだ」
東堂さんは春画を風呂敷に包み込むと
風のように出て行きました
羽貫さんは麦酒を水の如く飲みました
鯨飲という言葉がありますが
一美人の腹中に鯨一頭ありといった趣です
◯
猥褻物陳列罪の瀬戸際にいた私を救ったのは
店を蹴り出された東堂であった
◯
広い座敷では若い男女が入り乱れてまさに宴もたけなわ
羽貫さんは泥酔を装って
便所帰りの酔っぱらい大学生を廊下で待ち伏せ
抱きついて半ば強制的にい意気投合
そのまま大声をあげながら宴席に乗り込みました
私と樋口さんは
羽貫さんが切り開いた道をしずしずと進んだにすぎません
彼らは大学の文科系サークル「詭弁論部」の方々でした
英国へ留学するOBの宴ということで
三鞭酒が回されてています
やがて人々が両手を上に上げて頭上で手のひらを合わせ
腰をくねらせながら座敷内を練り歩き始めました
それが詭弁踊りです
じつに楽しげなので
私し樋口さんも喜んでその列に紛れこみました
*
還暦の大学同級会に紛れ込み赤玉ポートワインを飲む
原作では
隠し芸を所望された樋口さんが本当に天井まで浮いてみせる
宴の席は朗らかになって
両手を上に上げて手のひらを合わせ くねくねと踊りました
その方々こそ
かつての詭弁部論部員であり
詭弁踊りを考案した人々でした
◯
私が東堂に呼ばれたのは
先斗町の小さなビルの二階
カウンターだけの洞窟のようなバーで
なぜか達磨がうじゃうじゃいた
やがて東堂の知り合いの古本屋が登場し
見知らぬオヤジが倍に増えた
東堂は 彼の愛蔵の春画を今宵
「閨房調査団」の競売を開いて
売り飛ばすことに決めたと言った
商売で行き詰まった上での苦渋の選択である
これで小金をこしらえて李白翁から逃げるほかないと
◯
暗くて狭い先斗町の南から
背の高い電車のようなものが
燦然と光を放ちながらこちらへ向かって来るのです
ふいに樋口さんが後ろを振り返って
「やあ李白翁」が来たといいました
私ぐいと東堂さんを見上げました
「東堂さん これから李白さんと飲み比べします
あなたの借金を賭けて」
私は叫びました
「私は必ず勝つでしょう」・・・
**
彼女が古本市へ行く、という情報を
私はある信頼できる筋から聞いた・・・
***
彼女が学園祭へ行く、という情報を
私はある信頼できる筋から聞いた
パンツ総番長が思いを寄せる林檎の君・・・
****
その風邪は次々に感染者を増やし町中に蔓延した・・・
娘が引っ越しの時 本を十数冊置いていった
その中にこの原作があった
原作を読んでからDVDでアニメを鑑賞
原作は奇天烈な話が面白かった
これは映画向きだと思った
アニメになった
でも
アニメは面白くなかった
原作は320ページで四部構成
それを全部アニメ化したのも間違い
第1章だけを丁寧に描いた方がまだ良かった
原作を読むべし
自由な空想が広がるように
アニメを見ずに原作を読むべし
地に足をつけず生きることだ
さすれば飛べる
2017年 日本アニメ 92分
地元信州の大学に通っていた娘は
林檎隊なる倶楽部に所属し
京都大学の学園祭に
毎年 林檎を売りに行っていた
・