鳩山前首相の発言が波紋を広げている
 自らが提唱した「新しい公共」をめぐる「裸踊り」発言など、ツイッターでの発言が波紋を呼ぶことが多い鳩山由紀夫前首相だが、大韓航空機爆破事件の実行犯の金賢姫・元工作員の来日をめぐり、ツイッター上で報道陣の取材姿勢に苦言を呈している。ただ、今回の来日をめぐっては、「民主党の支持率アップを狙ったものだ」との声も根強く、批判は筋違いではないかとの指摘もあるようだ。

 金元工作員は、2010年7月20日早朝、政府がチャーターした民間のビジネスジェット機で羽田空港に到着。そのまま黒塗りの高級車で、長野県軽井沢町にある鳩山由紀夫前首相の別荘に向かった。この様子を、報道各社はヘリを飛ばすなどして現場から中継を行った。

■「メディアの役割と責任をどう考えますか」

 鳩山前首相がツイッターで書き込みをしたのが、この状況から約1日が経った7月21日午前8時30分。7月3日以来、18日ぶりの書き込みだ。鳩山氏は、

  「一般論として聞いてください」

と断った上で、

  「メディアがある人物を『様々な危険を想定し、警察は行動を非公開にしています』と言いながら、その人をヘリまで使い追跡しています。ご当人や周囲の安全が心配です。皆さんはメディアの役割と責任をどう考えますか」

 報道陣の姿勢に疑問を投げかけた。「一般論」と断っているものの、書き込まれた時期や、文脈を踏まえると、金賢姫元工作員の来日のことを指しているのは明らかだ。

 来日について「非公開」という面を強調する鳩山前首相だが、今回の来日をめぐっては、政府の側も、決して口を閉ざしていたという訳ではない。例えば中井洽拉致問題担当相は、6月29日の会見でこそ、7月に来日が予定されていることについて聞かれて、

  「NHKに聞いて下さい。そんなことを報道したのはNHKですから、NHKさんに質問して下さい。僕に質問してもらっても、僕は知りません」

と、ノーコメントの立場をとったものの、7月8日の会見では、韓国で日本大使が暴漢に襲撃されそうになった件について聞かれ、

 「金賢姫さんの来日については、交渉を続けているというところでありまして、こういう事件で左右されるということはないと考えております」

と、来日に向けた交渉が進んでいることを認めている。さらに、日本到着後の7月20日の会見では、鳩山前首相の別荘が宿泊場所になった理由について、釈明に追われてもいる。

■本当はマスコミをシャットアウトできた?

 この対応は、北朝鮮の金正日総書記が5月3日から7日にかけて訪中した時の中国政府の対応とは対照的だ。中国政府のスポークスマンは、金総書記が入国した後も、

  「その問題について、提供できる情報はない」(5月4日)
  「(北)朝鮮の最高指導者が中国を訪問すれば、適切な時期に情報が発表される」(5月6日)

と「ダンマリ」を決め込み、中国政府が金総書記の訪中を認めたのは、金総書記が帰国した5月7日のことだった。

 いわば、日本政府は、「マスコミをシャットアウトするやり方はあったのに、あえて撮らせていた」面があると指摘されても仕方のない状況だ。例えば、金元工作員が羽田空港に到着した際も、飛行機から降りる様子を傘ではなくビニールシートで隠すというやり方もあったはずだ。

 ツイッター上では、今回の鳩山前首相の発言に対して、賛同する声も多い。具体的には、多くの報道関係者がいっせいに取材に殺到する「メディアスクラム」について、マスコミを批判する声だ。

 一方で、

「一般論としては正しいが、今回の対象の人は、明らかに一般論から外れる」
「一般論からすれば、テロリストをVIP待遇することに違和感がある」
「メディアに情報流してる人もどうかと思う」

と、鳩山前首相に対して批判的な声も多い。

 今回の鳩山発言を批判的に取り上げるメディアもある。例えば東京スポーツは「前首相の『一般論』どう考えますか」「鳩山前首相 KYツイッター」と題して、民主党関係者の

  「金元工作員の来日は鳩山政権下で進められていたもので、政権浮揚が狙いだった。鳩山氏にしてみれば、別荘も好意で提供したのに思わぬバッシングがおき、よほど腹に据えかねたのでしょう。それでもマスコミに怒りをぶつけても仕方がない。黙っていればいいのにKYとしかいいようがない」

との見方を紹介している。


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