自分探しから他人との比較へと陥る

 ”ダイエット”誰もが一度は試みることであろう。しかし著者は、理想的な女性、身近な他人との比較の上でされる”ダイエット”に関してとりとめのない無限比較に陥り、「個性」というかけがえのないものを失っていくことを危惧しています。

 

 本の中で、現代の自分探しについて端的にまとめられた文があります。就職活動を例にとり、常に他人と優れいている点について競い合う、自己アピールなのに他者との比較の上自分の優位な部分を探す行為について、

「自分探し」がわたしを見つめる作業ではなく、他人とわたしを比べたうえでわたしが望む形で他人に認めてもらうことを求める作業 P38

 この例では確かに自分の志望した企業に勤めたいという強い思いの人も確かにいるでしょう、しかし私もそうだったのですが、他人と比較すると常に自分より優れた部分を持っている人は必ず現れます。その時、虚しさや劣等感に苛まれます。その中でも就職活動中は自己PRを作成しなければほとんどの企業では面接もできません。非常に苦痛を強いられる作業であったと記憶しています。

 どうしても現代社会はこの他人との比較に陥ることが多々あるように思います。SNSなどがそうです。私は私らしく誰の考えにも傾倒されない自己の確立といった考えが容認されやすい世の中になりつつありますが、その背景にはいつも他人がいます。仕方のないことだと思いますが、少なからず生きづらさを感じている人がいるのではないでしょうか。

 そんな中でも本の中に面白い話があります。数字を持たない民族の話です。彼らは数という概念がないので比較しません、というか比較できません。りんごはりんごであり、2つのりんご、赤いりんごでもないのです。著者は比較について、、

概念で何かをまとめる際、内部の多様性に目をつむる必要がある P122

比較しない、数字を持たないとはどういうことなのか、読んでみると面白いかもしれませんね。

ダイエット幻想という題名からでは想像もできないほど自己と他者の関係性について勉強になる本でありました。