またまたローカルな話題で恐縮です。。。
茨城県では、ここ数年で公立中高一貫校の開校が相次ぎ、今月実施された入学者選抜には、県内小学6年生の10%が受検するなど、巷では大きな話題になりました。
先日、入学者選抜が終わりましたので、この件について少し書いてみます。
茨城県の公立中高一貫校は、1月20日が合格発表で、26, 27日に入学辞退者の欠員補充が行われました。
公立中高一貫校のホームページには、「令和3年度入学者選抜につきましては、入学予定者が決定いたしました。」と書かれています。
これ以後、入学辞退者が出ることはほとんどないでしょう。
このように茨城県では、合格者に対して、早々に入学確約書の提出を締め切ってしまうため、都内私立中との併願はできません。
たまに、御三家中と両方合格している事例も見かけますが、このケースは、初めから公立中高一貫校には入学する気はなく、都内私立受験の予行練習として受けているか、力試しで受けているものと思われます。
ただ、これはレアなケースであり、隣接する千葉県と比較して、入学辞退者が極端に少ないのが茨城県の公立中高一貫校の特徴となっています。
すでに、各塾から合格者数が発表されていますので、表にまとめてみました(1/28現在)。
今回、特に注目されていた県立トップ校(水戸第一、土浦第一)の動向ですが、市進が合格者数の約50%を占めて首位でした。
(ちなみに、茨城県内にSAPIXはありません。日能研や早稲アカも1教室のみ。早稲アカのグループ塾が水戸にあります。県内に大手塾の進出が少なく、塾の選択肢が少ないのが実情です。)
この数字を昨年の高校入試の合格実績と比較してみましょう。
市進の高校入試の合格者数は、水戸第一 93名(定員320名)、土浦第一 105名(定員320名)であり、定員に占める割合は約30%でした。
この数字を見比べると、市進の合格者に占める割合(占有率)は、中学の方が圧倒的に高いことがわかります。
公立中高一貫校の入学者選抜で行われる適性検査は特殊であることから、これまで合格者を多く輩出し、適性検査攻略に関するノウハウを多く保有している一部の塾に偏る傾向にあるのです。
並木、日立第一、竜ヶ崎第一も同様です。
それでは、入学辞退率を推測してみましょう。。。
欠員補充前(26, 27日以前)に、各塾から発表されていた合格者数を以下に示します。
欠員補充前後で合格者数が変わっていた箇所を水色で塗りました。
各学校の増加数を確認すると、水戸第一(±0)、土浦第一(+2)、並木(+12)、日立第一(+1)、竜ヶ崎第一(+1)になります。
これが全て入学辞退者によるものか不明ですが、この数字から重要な事実がわかります。
それは、「並木を除き入学辞退者はほとんどいなかった」ということ。
その要因として、茨城県は公立人気が高い地域であることに加え、コロナ禍で地元志向が高まっていることもあると思います。
ちなみに、市進と思学舎の2つのグループ塾の合格者数をベースに入学辞退率をざっくり推測してみると・・・
水戸第一(0%)、土浦第一(2.5%)、並木(8.8%)、日立第一(1~2%)、竜ヶ崎第一(1~2%)
この中で興味深いのは、土浦第一と並木の辞退率の違いです。
土浦第一は150年近い歴史を誇る名門校です。一方で、並木の開校は昭和59年であり、中等教育学校に生まれ変わったのは13年前と比較的新しい学校ですが、学校ホームページによると、東京大学への現役合格率は県トップです。
並木における教育改革の成功は、この度の県立トップ校の中高一貫化に大きな影響を与えたと考えられます。
県南部で高い大学合格実績を誇る2校ですが、今回の中学受検、いざフタを開けてみれば、土浦第一は第一志望者がほとんどであったのに対し、並木は私立との併願が比較的多く、塾の合格者数の推移から、あくまで計算上ですが、12~14人程度の辞退者が出ていたと推測されます。
並木の辞退率(推測値)は昨年より上昇していました(4.8%→8.8%)。
茨城県内では、2005年のつくばエクスプレス(TX)の開業によって都内難関中への進学者が増えたと言われています。
TX沿線に新しく移り住んだ方が都内難関中を受験し、さらに、TX沿線から比較的近い公立中高一貫校である並木も受検する傾向があるのかもしれません。
土浦第一や並木などの公立難関校を辞退しているのは、主に都内難関中を志願するような成績トップ層。
茨城県内では公立中高一貫校を入学辞退する人は非常に少ないのですが、都内私立中受験者が比較的多いTX沿線に位置する「並木」だけは例外の存在であって、その辞退率は私立中受験組(特に成績トップ層)の参戦に左右されていると言えるのです。