今回は公立中高一貫校の辞退率(東京編)について書きます。
【過去記事】
現在、都立中高一貫校は全部で10校あり、完全中高一貫教育を行う中等教育学校と、高校募集のある併設型中高一貫校の2つのタイプに分かれます。
■中等教育学校
•小石川中等教育学校
•桜修館中等教育学校
•立川国際中等教育学校
•南多摩中等教育学校
•三鷹中等教育学校
■併設型中高一貫校
•白鷗高校・附属中学校
•両国高校・附属中学校
•武蔵高校・附属中学校
•富士高校・附属中学校
•大泉高校・附属中学校
併設型中高一貫校は、2022年度までに中等教育学校へ移行することが発表されています。
その背景には、併設型中高一貫校では高校募集の人気がなく、附属中学から進学した内進生に比べ高校入学組の大学進学実績は伸び悩んでいるため、高校募集を停止し、6年間一貫教育を推進したい事情があるようです。
都立中高一貫校は、千葉や茨城の公立中高一貫校とは異なり、入学手続率(辞退率)が都教育委員会より公表されています。
今回、公表されたデータを基に、都立中高一貫校における、最近5年間の入学辞退率の推移をグラフにしてみました。
このグラフを見ると、小石川を除いて都立中高一貫校の辞退率は、おおむね10%以下で推移していることがわかります。
入学辞退率が低いことは、志願者の多くが第一志望者であることを意味しており、これは都立中高一貫校の大きな特徴といえます。
茨城県内の公立中高一貫校も、東京と同様に入学辞退率は低いのですが、教育環境に大きな違いがあります。
茨城は公立人気が高い地域であり、私立中がそもそも少ないのに対し、都内には多くの有名私立中があり、都心を中心に中学受験熱が非常に高い状況にあります。
都内では私立中受験者が多いにもかからわず、都立中高一貫校の入学辞退率が低いことから、私立中との併願者が少ないことが示唆されます。
その理由として、「私立中の受験対策」と「都立中高一貫校の適性検査対策」の両立は厳しいことに加え、受験スケジュールの関係で、2月3日に都立中高一貫校を受けるとなると、私立中の受験機会が減ってしまうので、都立中高一貫校は第一志望でないと受けにくいためでは?と推測します。
参考までに、
最近5年間の平均辞退率が高い都立中高一貫校は、
①小石川(16.6%)
②桜修館(9.1%)
③武蔵(8.0%)
であり、上に示したグラフからも小石川の辞退率は群を抜いて高いことがわかります。
では辞退率が高い都立中高一貫校に何か傾向はあるのでしょうか。
都立中高一貫校の過去5年間の平均入学辞退率と、四谷大塚が実施している合不合判定テストの80%結果偏差値の関係をグラフにしてみると、この2つの数値には相関があることがわかりました。
合不合判定テストは私立中受験者を対象とした模試であり、公立中高一貫校とは出題傾向が全く異なるため、公立中高一貫校の合格可能性を判定することは難しいと考えられます。このような相関関係が見られることは意外な結果です。
このグラフは、都立中高一貫校の中でも、合不合の偏差値が高い学校ほど、入学辞退率が高い傾向にあることを表しており、私立中対策と都立中対策を両立できるのは、いわゆる偏差値が高い子が多いという事実を示しています。
都立中高一貫校の辞退率の低さは、都立中高一貫校の人気が高いことに加えて、私立対策と適性検査対策の両立の厳しさと、(千葉とは異なり)私立中と重なる受験スケジュールも関係し、私立受験組の参戦が少ないことによるものと考えられるのです。