先日、茨城の公立中高一貫校の入学者選抜の合格発表がありました。

 

茨城では2022年度までに公立中高一貫校が10校増設されることが発表されていて、その動向が注目されていましたが、実際にフタを開けてみると、倍率が5倍近くもある学校もある一方で、定員割れの学校もありました。

 

受験関係のブログなどを見ていると、適性検査で基本問題が増え、易しくなったとの意見があるようです。昨年度までと比べて、多様な学力レベルの子が公立中高一貫校を受検することになり、教育委員会でその点を考慮したのかもしれません。

 

茨城の公立中高一貫校では、合格者は1/27(月)までに入学確約書を提出する必要があります。入学確約書を提出すると原則辞退できないので、都内私立中との併願は不可能なスケジュールになっています。

 

すでに次年度の選抜日程案が発表されていますが、今年度と基本的に変わっていません。例えば、2021年開校予定の土浦第一中と御三家中の併願は困難です。

 

これは茨城に特有なことなのでしょうか。

 

そこで東京や周辺県の公立中高一貫校の選抜スケジュールについて調べました。

 

入学確約書の提出期限が早い順に並べてみると・・・

 

 ■茨城(~1/27)

 ■千葉(~2/3)

 ■埼玉(~2/4)

 ■東京(~2/10)

 ■神奈川(~2/12)

 

これを見ると、都内私立中との併願ができないのは茨城だけであることがわかります。

 

一方、都立中高一貫校では、都内私立中との併願も可能です。

 

東京都教育委員会の公表データによると、都立で最難関とされる小石川中等教育学校では、合格者の約15%が入学辞退しており、私立難関中との併願が多いことを示しています。

 

都立中高一貫校の10校について、辞退率(ここ2年の平均値)の高い順に並べると、以下の通りになります。

 

小石川(15.3%)>桜修館(10.3%)>白鴎(7.4%)>武蔵(6.7%)>大泉(5.4%)>両国(5.0%)>富士(4.2%)>三鷹(4.1%)>立川国際(1.9%)>南多摩(1.9%)

 

やはりというか、都心の学校の方が辞退率が高いことがわかります。

 

ちなみに茨城では東京のように、辞退率は公表されていませんが、塾が発表する合格者数の推移から、おおまかな推測が可能です。

 

例えば、2年前の並木中等教育学校(定員160名)の辞退率を推測してみます。

(当時、合格発表が1/17で、欠員補充が1/23~1/24でした。)

 

並木中等の合格者の90%は、市進グループと思学舎グループの出身であり、この2つの塾の合格者数の推移を追跡しました。

 

合格発表日1/17(左)と2月中旬の合格者数(右)を示します。

 

■市進グループ (83名 → 85名)

■思学舎グループ (61名 → 66名)

 

この間、市進グループでは2名、思学舎グループでは5名ほど増えていました。

 

もしこれが入学辞退によるものとすると、並木中等の辞退者数は160名中7名(辞退率=4.4%)と推定されます。

 

この辞退率は、先ほど述べた都立最難関校である小石川中等教育学校の1/3~1/4程度です。

 

ではお隣の千葉ではどうか。最難関の県立千葉中(定員80名)では、SAPIXが合格者数の半数近くを占めていることから、渋幕など私立難関中との併願者が主流であり、辞退率は茨城よりはるかに高いのではと想像します。

 

一方、茨城では、公立中高一貫校の受検者の95%は第1志望者であり、私立との併願者は非常に少ない(適性検査型入試を除く)。

 

その背景には、そもそも県内に私立中が少ないことと、都内難関中を志望する成績トップ層が公立中高一貫校を併願することができない事情があるのです。