【登場人物】

・佐藤…日本酒に強い(と思っている)。

・田村…もうかなり出来上がっている。

・山口…理屈派。別腹理論の提唱者。

・店員…現実を見ている人。




【場面】

居酒屋の座敷。

空いた徳利とお猪口が無言で語りかけてくる終盤戦。




佐藤「……いや〜、飲んだなぁ」

田村「もう一滴も入らない……」


山口「じゃあ、締めラーメン行こっか」


田村「は? 無理無理。今、立てる自信ない」


山口「いやいや、締めは別腹だから」


佐藤「そうそう。

 日本酒で満たされた腹と、

 ラーメンを受け入れる腹は、構造が違う」


田村「人体を勝手に増築するな」




店員が下げ物をしながら一言。


店員「ラストオーダーですけど、

 皆さん、顔がもう“終電逃した顔”ですね」


佐藤「大丈夫です。

 このあと“回復イベント”入りますから」


店員「……回復イベント?」


山口「ラーメンです」




【場面転換】

深夜のラーメン屋。

さっきまで「無理」と言っていた3人が、

なぜか黙々と食べている。


田村「……あれ?」

佐藤「どうした」

田村「普通に入る……」


山口「ほら。別腹、実在する」


佐藤「日本酒は“前菜”だった説あるな」




【ラスト】

スープを飲み干したあと。


田村「……もう一軒、行ける?」

佐藤「いや、それはさすがに……」

山口「それは“別腹の別腹”だな」


(新潟の夜は、

日本酒とラーメンで

人体の限界を静かに書き換えていく。)


いかがでしたか?笑っていただけましたか?

「もう一滴も入らない」と言っていた人ほど、ラーメンの湯気を見た瞬間に別人格になる——

新潟も山形もラーメン一人当たりの消費量は全国トップクラスですから。


日本酒で満たされたお腹と、

ラーメンを迎え入れるお腹は別構造。

そんな人体の増築みたいな理屈を、みんなが疑いもなく共有しているのが怖いのに、実際、なぜか入ってしまうからさらに怖いんですよね。


そして一番のオチは、完食したあとに出てくる「もう一軒行ける?」の一言。

それは別腹じゃなくて、たぶん“気合”です。