【登場人物】
・父(健二)…鐘を聞いて年を越したい派。
・母(真理)…早寝最優先派。「正月は体力勝負」。
・娘(ヒナ)…どっちでもいいが、面白がるタイプ。
【場面】
大みそかの夜。こたつ。
テレビは年末番組。外は雪。
時計は23:10。
健二「今年はさ…除夜の鐘、聞きに行こう」
真理「無理。寝る」
健二「まだ23時だよ?」
真理「だからこそ寝る」
ヒナ「年越し前に年越してる人いる」
健二「年の最後くらい、鐘で締めたくない?」
真理「私は睡眠で締めたい」
健二「鐘の“ゴーン”で心が清まるんだよ」
真理「あなたのいびきの“ゴーン”も清まる?」
健二「清まらない」
健二、作戦に出る。
スマホで“除夜の鐘 配信”を開く。
健二「ほら、家で聞ける。
ぬくぬくしながら108回」
真理「108回って…途中で寝るわ」
ヒナ「むしろASMRじゃん」
健二「じゃあ、1回だけでも!」
真理「1回聞いたら“もう1回”って言うでしょ」
健二「言う」
真理「だから寝る」
【ラスト】
23:58。
真理は布団に入って完全に寝る体勢。
健二はこたつで必死に起きている。
(スマホから静かに鐘の音)
「ゴーーン……」
健二「…きた…」
その瞬間、真理が寝言でつぶやく。
真理「……もう一回…」
健二「えっ、聞きたい派に転向!?」
真理「……おかわり…」
ヒナ「それ、鐘じゃなくて年越しそばの夢」
(大みそか、家族の心は清まらず、
腹だけが清まっていく。)
いかがでしたか?笑っていただけましたか?
除夜の鐘って、聞くと「年を越した感」が一気に出るのに、
実際は寒いし眠いし、こたつは裏切らない。
この“風情”と“体力”の戦いが、大みそかのリアルですよね。
鐘を聞きたい父のロマンと、
「正月は体力勝負」と言い切る母の現実。
どっちも正しいのに、家庭内では静かなバトルになる。
そして子どもだけが、勝敗より“状況”を楽しんでいる——
年末ってだいたいそういう構図かもしれません。
最後のオチは、鐘の「もう一回」じゃなくて、そばの「おかわり」。
新年の清らかさは、108回の鐘より先に、
まず胃袋で始まるのかもしれません。
