今回は、マツダ ビアンテのご入庫です。
症状は、DSC警告灯とABS警告灯の点灯。

運転中にこのような警告灯が点灯すると、不安になりますよね。
DSCは横滑り防止装置、ABSは急ブレーキ時などにタイヤのロックを防ぐ装置です。
どちらもブレーキ制御に関わる大切なシステムなので、まずは全体を把握するためにフルスキャンから進めました。
フルスキャンの結果、DSC系統に以下の故障コードを確認しました。

- C0020
- C0082
ここで大事なのは、故障コードが出ている=その部品交換で確定ではないということです。
実際に確認してみると、
C0020は消去可能でした。
一方で、C0082は現在故障として残り、消去できない状態でした。
この違いはとても重要です。
消えるコードは、過去に一時的に発生した異常や、条件がそろった時だけ入ったコードの可能性があります。
逆に、消えないコードは“今まさに異常が存在している”可能性が高いため、診断の優先順位が上がります。
今回は、C0082に焦点を絞って診断を進めることにしました。
次に行ったのは、DSCユニットの電源・アース確認です。
故障コードだけを見ると、DSCユニット本体が悪そうに見える場面ではあります。
ただし、ユニットにきちんと電源が入っていない、あるいはアース不良がある状態でも、ユニット不良のようなコードが入ることがあります。
そのため、いきなり本体不良と決めつけるのではなく、まずは回路図を確認し、DSCユニットに入っている
- 常時電源
- IG電源
- アース回路
をひとつずつ点検しました。
結果は、すべて正常。
この時点で、少なくともユニットの外側にある基本条件は満たしていることになります。


アースOK。

常時電源OK。

もう一つの常時電源OK。

IG電源OK。
DSCユニットへの電源、アースはすべて問題なし。
さらに今回は、CAN通信の確認も行いました。
現在の車は、各ユニットが単体で動いているわけではなく、多重通信によってお互いに情報をやり取りしています。
つまり、DSCユニット単体の問題に見えても、通信異常が原因で似たような症状が出ることもあります。
このため、今の車両診断では
“電源が来ているか”だけでなく、“通信が正常か”も確認することが重要
だと考えています。
今回はオシロスコープを使用して、CAN通信波形を確認しました。
結果として、通信波形は正常。
大きな乱れや崩れもなく、通信異常は考えにくい状態でした。

CAN通信はオシロスコープで確認します。

CAN Hi、CAN Lo ともに問題なし。
念のため、作動電圧をデコードしてみましたが、こちらも問題なし。
ここまでの結果を整理すると、
- C0082は現在故障で消えない
- 電源正常
- アース正常
- CAN通信正常
という状況です。
つまり、ユニットの外側に原因がある可能性はかなり低いと考えられます。
この流れから、今回は
DSCユニット本体の内部不良
と判断しました。
新品部品を確認しましたが、当時は欠品で納期未定。
今回はお客様とご相談のうえ、中古DSCユニットで対応することになりました。
ユニット交換後は、ブレーキフルードのエア抜き作業を行います。
DSCユニットはブレーキ油圧制御に関わるため、交換後はエア抜きが必要です。
また、作業中に確認したところ、ブレーキフルードの汚れがかなり強い状態でした。
そのため、通常より多めのフルードを使用しながら、できるだけ内部のフルードも新しいものに入れ替えるように作業を進めました。

交換前のブレーキフルードはなかなかの汚れ具合でした。

圧送にてしっかりとエア抜き。

交換後は、ばっちりキレイになりました。
その後、
- コンフィグレーション
- DSCユニットの各センサー初期化
を実施しました。
ユニットを交換しただけでは終わらず、車両に合わせた設定や学習が必要になる場合があります。
この作業をきちんと行うことで、交換したユニットが車両側と正しく連携できる状態になります。
最後に試運転を行い、再度フルスキャンで確認しました。
結果は、故障コードなし。
警告灯も消灯し、作業完了です。
今回のように、故障コードが入力されていると、ついそのまま部品交換に進みたくなる場面もあります。
しかし実際には、
- そのコードは現在故障なのか
- 電源は正常か
- アースは正常か
- 通信は正常か
といった基本確認を積み重ねることで、診断の精度は大きく変わります。
「あれ?治った?」ではなく、再現性のある診断を心がけています。
DSC警告灯、ABS警告灯点灯などでお困りの方は、ご相談ください。
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